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2004年2月28日 (土)

出走:ディック・フランシス





なんだか読書するのも久しぶりのような気がする。本屋でたまたまフランシスの文庫本を見つけたので買ってみたのだ。



フランシスの作品はたいてい日本語版が出るとすぐに単行本で買ってしまうので、文庫本で買うのは珍しい。しばらく読書から遠ざかっていた間に単行本を見逃したらしい。



「出走」はめずらしく短編集である。13本の短編が納められている。いつものフランシス節とは違った手触りで、先に書いたフランシスのいくつかの定番条件が満たされないものも多い。あるものは意外な一面を見たような気がしたし、訳がちょっとどうだかなぁ、というのもあった。



そういう疑問は後書きの解説を読んで払拭された。後書きを書いているのは川出正樹という書評家(そんな職業があるんだ!?。いいなぁ)だが、彼の指摘によると、これらの短編は何度かあったフランシスの不調な時期に書かれたもので、その都度フランシスの不調回復のための手探りの意味を持っているということだ。



たしかに、フランシスにも波はある。常に平均以上のレベルであるとは言っても、私にもここ何年かは「歳取ったのかなぁ?」と思えるような作品があった。もう一歩踏み込んでくれるとおもしろいのに、というところで終わりになってしまって、はぐらかされたような印象があったものだった。



そういう長編とは別の意味で、というか、別の作品群としてこれらの短編をみてみると、たしかに別の視点から見るおもしろさがある。



というわけで、もう一度この短編集を読み直しておるところなのだが、「モナに捧げる歌」にみられるような、イギリス人特有の(・・・と敢えて言いきってしまおう)いやらしさみたいなものをフランシスが肯定しているのも興味深い。



訳が変だなぁ、と思ったところが何カ所かあったのだが、それは誤訳というのではなくて(原語を読んでないからね)日本語としてこなれていないということなのだけれども、訳者はいつもフランシスを訳している菊池光だし、一部を高見浩(マルティン・ベック・シリーズだ!)ともう一人平尾圭吾という人が訳しているのだが、菊池さんの所で整理されていない日本語があって、とまどった。



でもまぁ、おすすめです。主にフランシスファンにね。



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