ディック・フランシス
競輪競馬の類はやったことがないが、ディック・フランシスの競馬シリーズは大好きだ。
「興奮」「大穴」「利腕」などのタイトルで目を引くフランシスの競馬シリーズを、読書好きの皆さんなら一度は目にしたことがあるだろう。私も最初はこの思わせぶりなタイトルと「競馬シリーズ」と名打たれているところから敬遠していたのだが、「興奮」というタイトルの(奇しくもこれはフランシスのデビュー作であった)を読んで一挙にファンになってしまった。
以来29作、フランシスの作品にまず駄作はない。評論家的にいえば全部が駄作だということも言えなくはないのかも知れないが、そういう人には勝手に言わせておけばよいのだ。
シリーズものと言うことはやはり共通点と言うものがあって、
1:必ず馬が出てくる。
2:ミステリ仕立てである。
3:犯人は意外な人物である(あたりまえだ)。
4:主人公はたいてい精神的に大変タフである。
5:主人公は身の回りのちょっとしたことに注意を向け、なんの気なしに調査を始める、ところがそれは実は巨悪の一部であって、主人公は思いもかけぬ抵抗に出会う。しかし、タフで正義感が強いものだから巨悪に立ち向かってしまう。
6:主人公はたいてい物理的にひどい目にあう。
7:サイドストーリとして、必ず誰かの成長が取り上げられている。
8:日本人好みである(アメリカ的でない、島国的?)。
これだけ共通点が揃っているのだから、水戸黄門みたいだという評価も可能なわけだが舞台設定の多様さが単調になることを防いでいる。
ちなみに、ディック・フランシスは元騎手である。彼が最初の作品を上梓した時、人々は「なんで元騎手にこんな小説が書けるんだ?」といぶかったという。しかし、さらに作を重ねるにつれ、人々の評価は「こんな小説を書ける人がなんで騎手なんかやってたんだ?」という疑問に変わっていったということである。この疑問に対する答えは、作品をいくつか読めば分かる。
というわけで、まずは「興奮」を読んでいただきたい。強く推薦します。
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