冗談のようなギタリスト
いえ、ほんとに冗談じゃないんです。Stanley Jordanという冗談みたいな名前のギタリストなんです。ここに掲げた写真は、1990年のジャズフェステバルでのものですが、なにをやっているのかわかるかな?
ギター、特にエレキギターは、弦を押さえるだけでも音を出すことができます。普通の弾き方で言うと、左手で鳴らしたいポジションのフレットを押さえるだけで、右手で弾かなくても音を出すことはできるのです。これをハンマリングと呼んだりすることもあります。
さらに、右手で弦をはじくのではなくて、左手におけるハンマリングのように右手で弦を押さえることによっても音を出すことができるのです。これは「ライトハンド」というテクニックとしてロックギタリストなどが多用しています。
Stanley Jordanはそれをさらに押し進めました。おもに右手のハンマリングでメロディを弾き、左手は伴奏に撤するテクニックを身に付けたのです。このテクニックを彼はタッピングと呼んでいます。
最初の写真は、そのタッピングをさらに進めて、2本のギターを同時に弾いているところです。肩から下げたギターを左手で押さえて伴奏とし、スタンドに固定した別のギターを右手でタッピングしています。
この右手の動きをクローズアップしているのがこの写真です。
さらになにを思ったか、肩から下げているギターを右手でタッピングし、左手でスタンドに固定したギターを弾いています。
もともとはこんなふうに、一本のギターを両手で弾いていたのですがね。
1990年前後はジャズギター界の話題をかっさらっていたStanley Jordanでしたが、その後はまるで忘れ去られたかのようになってしまっています。ひとつには奏法の奇抜さだけがクローズアップされて、音楽性を問われることがなかったということが言えるかもしれません。
じっさい、独特のトーンを持てはいたのですが、音楽的に目新しいものを導入したとは言い難かったということだったのかもしれません。特徴的なトーンも、あまり細かいコントロールが効かないようで、一本調子に聞こえることもありました。
実際、「そんなに苦労してこういうテクニック身に付けるより、ピアノ弾いたほうがいいんじゃないの」と思うのでした。
彼の公式ホームページを見ると、このテクニックを彼はもっと広めたかったらしいことが読み取れます。でも後継者が現れなかったんですね。
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