クサい飯
刑務所に入ることを「クサい飯を食う」と言ったりすることがあるが、実をいうとわたしもその「クサい飯」を食ったことがある。
もう10年くらい前になるだろうか、新聞広告かなにかで地元の刑務所の「公開」というのがあるということだったので見に行ってみたのだった。刑務所の中で作られた家具とか、ええと、家具とか、ええと、家具とか、まぁそんなようなものが格安で買えるということも聞いていたので、行ってみようかという気になっていたのだった。
実際に行ってみると、「所内製作」の作品はそれほど安くもなく、飛び抜けて魅力的なものもなかったので結局なにも買わなかったのだが、展示会場の一角で「刑務所内の食事を体験」というコーナーが設けられていてそれに興味を引かれた。
実際に所内で食事に供されているものを(有料で)体験できるというのだ。せっかく来たのだから、ぜひこれはひとつ体験して帰ろうと思った。
注文したのはカツ丼、たしか220円だった。給食で使っているような、やや黄色っぽいプラスティックの容器に盛られた麦入りのご飯にやや薄くて硬いカツが乗っている。味噌汁が付いているのだが、これもなんだか薄くて、具には薄揚げともやしがはいっていたんだったかな。
カツ丼はおいしくない。それに、食べ始めるとすぐに雨が降ってきた。そこで考える。そうだよなぁ。こんなご飯がおいしいわけはないよなぁ。「所内のあのおいしいご飯が忘れられない」なんてことで戻って来る奴がいたら大変だものなぁ。殊更にまずくしているわけではないのだろうけれども、殊更においしくする理由もないものなぁ。
そういうふうに考えていると、そぼ降る雨の下の粗末なテントのしたで雨をしのぎながら特においしくもないカツ丼を食べている自分が情けなくなってきて、ようし、絶対にこんなご飯を食べるような境遇にはならないぞ、と思ったとたんに涙が一粒こぼれてしまったのだった。
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