読売的文章?に悩む
面白い本として紹介した「現代日本の小説」だが、一点どうしても納得できないことがある。
それは88ページの冒頭なのだが、こんな文章があるのだ。
「選考会はすでに始まっていたその日の夕方六時過ぎ。筆者は「すばる」編集部のある東京・千代田区猿楽町の集英社猿楽町ビルに向かった。」(元の文にカッコはない)
最初の文は何?五七五七七の体言止め?
私ならこう書く。
「選考会がすでに始まっていたその日の夕方六時過ぎ、筆者は「すばる」編集部のある東京・千代田区猿楽町の集英社猿楽町ビルに向かった。」
変えた部分の色を変えてあるんだけど、わかるかな? 「は」→「が」、「。」→「、」という変更で、私でなくてもこれが普通だと思うんだけど。
私が不安を覚えるのは、ひょっとしてこれは私の知らない日本語の新しいスタイルなのではないか?と考えるからだ。
文芸部のベテラン記者がこんなおかしな文章を書くのには、きっと何かわけがある。編集者のチェックを通過し、校正を通って出版されるのだから、うっかり間違いであるはずがない。
読売新聞を半年ほど購読していたことがあったのだが、読売の使う文章には私にとって何か違和感があって、結局朝日に戻してしまった。読売にはなにかそういう文章スタイルというのか文化というのか、そういうものがあるのだろうか?
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コメント
「選考会はすでに始まっていたその日の夕方六時過ぎ。筆者は・・・
「選考会がすでに始まっていたその日の夕方六時過ぎ、筆者は・・・
新聞記事なら×でしょうが、読み物ならOKだと思いますよ。読んだ印象はちょっと違うと思います。
いってみれば、書き換えた文はごく普通の循環コードで始まる曲、書き換え前はドミナント7thのテンションコードでいきなり始まる曲、みたいな?
「選考会はすでに始まっていた」という出だしで何かがすでに起こっていたことがはっきり出ます。そして「その日の夕方六時過ぎ。」と体言止めすることで、読者は何かの予感と「うっ」と息が詰まるような感じを持つでしょう、なんてことを筆者が考えていたかどうかは知りませんが、そんな解釈は可能です。
それに対して書き換えられた文は単なる状況説明でしかないので、ドミナントのテンションはありません。
いずれにしろ筆者は意識的にこの文を書いているはずです。
新聞記事の日本語も必ずしも正しいとは限らないと思います。以前読んでた日経でも時々違和感のある文はありましたし、毎日なんかこんなのもあります。
http://taka-sumi.cocolog-nifty.com/taki_blog/2007/02/post_5fa3.html
投稿: taki | 2008年1月29日 (火) 14時20分
確かに小説ならそういう解釈もアリでしょう。しかしこれは読み物といえば読み物だけど、ほとんど新聞記事に近いもので、言ってみればレポートです。
そこんとこは、実物を読んでもらわないと判断できないと思いますが、「選考会はすでに始まっていた。」という文であってもかなり違和感のある文脈です。
「すでに」という言葉がすでに異臭を放っている。なにが「すでに」なんだ? 6時過ぎという時刻に何か意味があるのか? というと何もない。
ドミナントから始めるというふうな遊び心の許される文脈ではないのですよ。淡々と循環とか、淡々とワンコードという文脈。そのあたりも見てもらおうと写真に撮ろうかと思ったときにはすでに手元になかったりするし。
投稿: PICKS CLICKS | 2008年1月30日 (水) 00時06分
なるほど、そういうことですか。ならばPICK_CLIKCSさんの書き方も言葉足らず、ですね。次の一文を本文に入れあったら理解できたでしょうが、件の文だけでは真意が伝わらないのではないかと・・・。
まぁ、Blogは日記ですから、読者を想定する必要はないともいえますが。
>「すでに」という言葉がすでに異臭を放っている。なにが「すでに」なんだ? 6時過ぎという時刻に何か意味があるのか? というと何もない。
投稿: taki | 2008年1月30日 (水) 12時28分
まぁ、言葉足らずは毎度のことなんですが、そこで居直るのもナニなので。
「選考会はすでに始まっていたその日の夕方六時過ぎ。」
これだけでも十分に香ばしくないですか? よく考えずに体言止めという言葉を使ったけれども、あらためて見てみると体言じゃないし。
歌詞とか詩とか、かなり変わった小説ならあるかも知れないけれども、普通の小説ならせめて、
「その日の夕方六時過ぎ、選考会はすでに始まっていた。」
じゃないですかね?
というわけなので、「すでに」までの説明は必要ないと考えました。
投稿: PICKS CLICKS | 2008年1月30日 (水) 23時28分