コードに基づいたアドリブで悩む
ジャズを志すものにとって、アドリブは魅力でもありまた難関でもある。アドリブを行うためにはまずコード進行を見るわけだが、そのコード進行に囚われてコードの一つ一つの処理に汲々としながらアドリブをするのはなにか違うのではないか、と常々考えてきた。
だからここ数年はコードの一つ一つにはこだわらなくて済むような方法を考えてきて実践してきた。それは端的に言うとスケールに注目してその中でアドリブフレーズを構成していくという方法である。これはある意味モード的ではあるが、少なくともチャーチ・モードとは違う。
ではスケールの中の音なら何を使ってもいいのか?何をしてもいいのか? というと、そこから先には理論ではなくて感覚的に処理しなくてはいけない問題があって、そのために感覚を磨くトレーニングをやったりしている。
まぁそんなわけで、コードの呪縛からだいぶ逃れられたかな? しかしその分、コード進行覚えなくなったなぁ、という状況でセッションとかに出没しているわけだが、ついにソコントコを指摘されてしまった。
藤沢のInterplayというお店では毎月第二木曜日がセッションデイということになっていて、私も今までに何度かお邪魔している。セッションマスターはジャズギタリストの佐津間純さんで、彼のトリオが一緒にやってくれたり、あるいは佐津間さんと1対1のギターデュオを挑まれたりもする。
実は前回、Bye Bye BlackBirdを突然指名されてやることになり、コードも知らないのにずうずうしくソロを2コーラスほどやってきたりしたのだった。その次のステージでは「I Hear A Rhapsody」をやるという話があって、私は「コードは知らないけれどもできると思う」と言ったのだが、おそらくは教育的配慮によって「知らないのなら止めましょう」ということになったりしていたのだった。
その後、「」ジャズ・ギター・マガジン」という雑誌で佐津間さんのインタビュー記事を読んでみたら、「ジャズだからといって適当でいいってことはないと思うんです。」という風な発言があって、ああなるほど、そういう人なんだなと納得していた次第。
今月のInterPlayセッションは先週の木曜日ではなく、今週の月曜日だった。これはチェック済みだったので、「Rhapsody」の敵討ちのつもりで譜面を用意して行った。で、まぁこの曲はいつもよりテンポを上げてしまったせいもあって、テーマをちゃんと弾けなくてダメだしされたりしつつも何とかやりきったわけだが、休憩中にたまたま来店されていたやはりジャズギタリストで旧知のAtsushiさんと話しているところへ佐津間さんが来られて、「コードのことはどういう風に考えてますか?」と問いかけられたのだった。
どのくらい深く答えていいものだかわからなかったので「まぁほどほどに見ています。全部を忠実にはみていません」と答えると、予想された展開に・・・。
つまり要するに「コードごとにあらかじめ短いフレーズ(リック)を覚えて、それをつなぎ合わせなさい」、「ソロだけを聞いて、元の曲が連想されないとダメ」という、私の意見とはまったく反対のことをおっしゃる。私はそういうの(前者)がいやなので、コードからの脱却を図っているのだ。後者なんて何の意味もないと考えている。
なので、私はコードというものは決め事ではあるけれども、それを支えるのが伴奏、それから自由になろうとするのがアドリブソロ、というふうなことを言ったような気がする。Amのコードに対してコードに従属したければラドミのアルペジオ弾いていればいいのだが、そんなアドリブソロなんてやりたくない。
ソロ演奏者にも裁量というものがある。アドリブソロのメロディとコードは相対的なものなのでメロディが強く主張すれば立場が逆転してコードがテンションになることもある。ソロのメロディにはメロディの必然性というものがあるので、それが時にはコードの枠を大きく飛び越えることもある。それはそれで表現として正しいので、批判されるようなものではない。
そのときには思いつかなかったのだが、例えば12小節のブルースでアドリブ・ソロをやっているときに、サブドミナントがIV7からIVmになるとか、ドミナントがIIm7-V7だとか、そんなことは誰も気にしていないと思う。少なくともブルースに慣れたものなら。
12小節ブルースにどんなコード付けをしようがそれは伴奏者の勝手だし、あるいはどんな代理コード解釈でソロをやろうとも勝手だ。どちらも感覚を頼りに理論を越えたところで勝負しているはずで、それを歌モノでのアドリブソロに置き換えたところで何の問題もないと思う。
まぁ、問題があるとすれば曲のコード進行を覚えなくなってしまって、「バッキングお願いします」といわれたときに困っちゃうくらいだが、これはまた別の話で。
9月22日追記: 誤字脱字を修正したついでに思い出したことを書いていく。 セッションの場で「コードシートを見るな」といってくれた人がいて、これは赤坂のクラブ「Kei's」でベースを弾いているStan Gilbertという黒人さんだった。もう3年くらい前になるかなぁ。 そのころはコードからの脱却を望んではいたのだけれども、まだ「コード見ない」までは吹っ切れていなかったころだったと思う。「見るな」と言われて「じゃぁ見ません」とは言えず、「天才じゃないんだから、そんなことはできないよ」と答えたのを覚えているが、なるほど、そういうやり方もアリだなぁ、と思って、その後そういう練習もするようになったのだった。
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