素敵なライブで悩む
私の辞書に「素敵」なんて言葉はない。そんな歯の浮くようなコッ恥ずかしい言葉はまず使うことはないし、使ったこともないと思う。実際、このblog内で検索してみたら1件ヒットしてしまったが、それは筒井康孝の小説タイトルだった。だから私が使ったわけではない。
そんな私なのだが、先日のAmaduosさんのライブは「素敵だった」と言わざるを得ない。
Amaduosさんは男女二人(kaokiさんとMoraさん)でナイロン弦ギターを演奏するインストルメンタルなグループで、以前大塚のボサノバ・パーティで面識を得た。その後、Stickamでのオンライン・ライブに来ていただいたり、Amaduosさんのライブを見に行ったりということがあったのだった。
音楽的な趣味が合った、ということもあったのだが、「『例えばジャズのライブでテーマ演奏してアドリブやって、エンディングテーマやって、ハイおしまい。』というのはおかしいんじゃないですかね?」というふうな会話があって、(演奏者だけでなく)お客さんに楽しんでもらえるジャズとは?というふうなことを議論したりしていたのだ。
そのAmaduosさんがCD発売記念ライブをやるということなので、これは面白いだろうと期待して行ったわけだ。特に今回はベースとパーカッションを交えた演奏もあるというし。
しかし、もしもそのベースがルートと5度を行ったり来たりするだけのような演奏だったら文句を言ってやろうという、やっかいななお客さんだ。もちろんその場で言ったりはしないけれども。
で、結論はすでに書いてしまったけれども、素敵な、いいライブだった。
演奏ももちろんよかった。時にルバートに持ち込んでじっくり聞かせたり、バンド全体でのキメが要所要所にあって、私があちこち顔を出しているセッションのような荒さは微塵もない。ちゃんと計画されたとおりの演奏で、聴衆のことが深く考慮されている。
演奏だけではなくて、会場の雰囲気つくりという点でも実に成功したライブだったと思う。まず、予約した席に着くと、私の名前が書かれたパンフレットがおいてある。このパンフレットは来場者への挨拶と、曲目紹介、さらには歌モノの曲についてはその歌詞の翻訳までが掲載されている(歌うわけではないのに!?)。締めくくりはメンバー紹介だ。
本来ならMCでもごもごやってしまうようなことをきちんとパンフレットにして、名前まで書いて席においておくというのはそう簡単なことではないと思う。まずこれで心をつかまれちゃった感じ。
そこへCDの売り子さんがやってくる。そういえばお会いするのは初めてかもしれないが、名前を聞いたことがある女性で、ボサノバを歌う人だという知識はあった。その時点ではどんなCDであるかはまったくなぞなわけだが、後で品切れになって残念がるよりは、と早々に買ってしまう。
演奏が始まるころには会場は満席だ。実は私も予約が遅れて席を確保していただくのに無理をお願いしたのだった。
演奏のことはすでに書いたが、Moraさん(女性)のMCもよかった。曲目紹介やメンバー紹介を意図的なものかそれとも天然なのかよくわからない笑いをとって会場を和ませる。それでいて、演奏するときにはきちんと客席に緊張感を与えている。
演奏曲目の中ではDolphinがなぁ、悔しかったなぁ。以前この曲を客前でやったことがあったのだが、うまく行かなかったのだ。そのときにはメロディとコードをギター一本でやろうとしたためにメロディがうまく際立たず、なんだかよくわからない演奏になってしまったのだが、AmaduosさんはkaokiさんのバッキングにのったMoraさんのギターがDolphinのメロディをうまく歌い上げていたのだ。これが悔しい。
まぁそんなこんなで、雰囲気のいい会場で雰囲気のいい演奏だから、いいライブにならないわけがない。なるほど、ライブというのは演奏者だけじゃなくて会場をも巻き込んで作りこんでいくものなんだな、と。
で、わが身を振り返って、こんなライブができるのかな? というお悩みなわけです。
CD「Sounds in Sounds」もいい出来で、これはいいです。イージーリスニングじゃないジャズっていうか、ジャズを感じさせないけれどもジャズ。自由にアドリブしているのだろうけれども、綿密に計算されているようにも聞こえる。こういうのは今までになかったんじゃないかな? これはお勧めです。
Amaduosさんの許可を得て、CDの一部(7曲目の「思いつかない」のサワリの部分)を試聴できるように掲載します。CDは全編こういったギターデュオで演奏されています。Blogシステムの制約上、音質を落としていることをご了承ください。
「Omoitsukanai.mp3」をダウンロード
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