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2010年3月22日 (月)

英国気質に悩む

Britishmaindイギリス系の小説をたまたま2冊読んだ。

■「禍いの荷を負う男」亭の殺人

マーサ・グライムズ著、山本俊子訳 文春文庫

厄介な叔母を持つ元貴族(彼は爵位を返上したのだ)と、厄介な上司を持つ刑事が協力して殺人事件を解決するのだが、だいたい登場人物がことごとく誰かを馬鹿にしているのが特徴って言うか。そこんとこが「禍いの荷」なのかという深読みも可能だが、このタイトルはイギリスの田舎の旅館の名前としては珍しくないのだそうで、この本のなかでも「牛と口」亭、「象と城」亭、「二つ首のスワン」亭、「白い牡鹿」亭、「悪魔と釘の袋」亭なんてのもあるらしい。

旅館の名前づくしを続けると、この小説シリーズはこの「禍い・・・」を処女作として「化かされた古狐亭の憂鬱」、「鎮痛磁気ネックレス亭の明察」、「悶える者を救え亭の復習」、「エルサレム亭の静かな対決」、「跳ね鹿亭のひそかな誘惑」、「独り残った先駆け馬亭の密会」と続く。もう何がなんだかさっぱりわかりません。


その「厄介な叔母」というのは元貴族の父の弟の嫁でアメリカ人なので、基本的にイギリス人から見ると一段低く見られる立場なのだ。だから彼女は発音をイギリス風にしたりして英国化に勤めるのだが、それでも文中では英国の一流からの見下した表現が強調される。

そんなふうにして一流は二流を見下し、二流は三流を見下すという構図があって、その最下層はそういう差別などには気づいていないふりをして生きていくのだろう。

舞台となっている年代がはっきりしないのだが、戦争の話が出てこないのと貴族院の歴史などからどうも1950年前後くらいなのかな? その「元貴族」が爵位を返上した理由が「貴族院の会議が退屈だから」ということで、なるほど貴族院というのはそういう世襲制のものだったのか。じゃぁ、日本の「参議院」ってのは何? 参議院は学識経験者の議院だったはずだが、タレント議員が全奥的な知名度を利用して再就職するところになっているんじゃないの?

犯人探しはまぁ順調に進むので、サスペンスとしては「普通」。しかし作者が英国好きのアメリカ人だということがわかると、上に書いたような英国風の気取りというか英国風のイヤミが実は逆手に取ったものらしいと知れる。だから「元貴族の叔母」というのも作者(女性である)の屈折した写像らしいのだ。ああイライラするっ。

というわけで、イライラとはしつつもこのシリーズをまた読んでいくかもしれない。

■633爆撃隊ラインメイデン作戦

フレデリック・E・スミス著、栗山洋児訳 光人社NF文庫

「禍い・・・」は英国のいやみったらしい部分を屈折的に強調した作品だが、こちらはそういう屈折もなく普通に英国風の生活を描いた小説だ。軍事小説だけれども人間関係なども丁寧に書き込まれていて、英国に深く根ざした身分階級制もさらっと書かれている。

もともとこの小説を読もうと思ったのは、ドイツ軍が山中に作った秘密工場を低空から爆撃して破壊するという映画を観た覚えがあったからだ。結果から言うと、どうもその映画とは違っていたようだったが、これはこれで面白い話だった。

633爆撃隊というのが実在したかどうかは知らないが、この小説の前にもう一作出版されていて、そちらでも北欧で大活躍したらしい。主役になるのは英国空軍のモスキートという双発戦闘爆撃機で、機体が全木製というのが特徴だ。小説では37mm機関砲で主翼に穴を開けられても基地まで帰還できるという強靭さだ。主翼に開いた穴よりも、それによる空気抵抗の増大のほうがダメージとして大きいと思うんだけれども、この小説ではそういうのは平気みたいだ。

対するドイツ軍はフォッケウルフFW190とメッサーシュミットの双発戦闘機ME110(当時はBW110と呼ばれていた)で、さらにドイツの対空砲火が近接信管というのを持っていて、これらが大きな脅威となる。

このME110は戦闘機としての性能はモスキートほどではなかったらしいのだが、当時はまだ普及していなかったレーダーを搭載して、夜間戦闘では大きな脅威となっていたようだ。英国軍のモスキートにはまだレーダーは搭載されておらず、夜間の行動には大きな制約を持っていたのだ。

しかし、まだトランジスタもなかった当時、レーダーは真空管を使って構成されていただろうし、回路もすべてアナログだったはずだ。よくそんなものを作ったなぁ、また使っていたんだなぁという感慨が大きい。そういう機器の整備も大変だったはずだ。こういうのをきちんとやってしまうのがドイツ流なんだろう。

写真はドイツのメッサーシュミット110戦闘機。

Me110

イギリスの話は、話としては面白いけれどもイギリス人と付き合うのはちょっとなぁ、という気がする。実際、お付き合いがあったこともあるのだが、どうも根本的には分かり合えないところがあった。どうも私はイギリス人よりはドイツ人のほうが好きみたいだ。


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