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2010年5月 9日 (日)

善い音楽と悪い音楽で悩む

Ellingtonデューク・エリントンの言葉として知られている「音楽には二種類しかない。善い音楽と悪い音楽とだ。」という言葉は、あちこちで都合のよいように都合のよい解釈で使われている。でも、じゃぁ誰がその善い悪いを決めるのだ? というとその問には誰も答えてくれないので、これは全く無意味な言葉になってしまう。

私の印象としては「音楽の正しさ」という話の文脈として、「どういう音楽が正しく、どういう音楽が間違っている(正しくない)のか?」という問がなされ、デューク・エリントンがその答えとして「音楽には(正しいか間違っているかではなくて)善い音楽と悪い音楽しかないのだ。」と言ったのであって欲しい、と思っている。

というのは私はある経験から「音楽に間違いというものはない」と考えており(思ったとおりにならないという意味での失敗はあるにせよ)、それによって自分を勇気づけているという背景があるからだ。

でも実際にエリントンはどういう背景でこういう事を言ったのだろうか? というのは誰しも興味あるところだろう(あれ?ありませんか?そうですか)。

Internetをいろいろ嗅ぎ回ってみると、さすがにあるところにはあるもので、こんな記述を見つけた。以下はそのほぼ全文と、私の拙訳である。精確な訳よりも意訳っぽくなっている。出展はこちら

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Duke Ellington spent a lot of time throughout his life defending Jazz from various attacks and put downs that came from a wide range of "experts" and music critics. Mark Tucker's The Duke Ellington Reader details many of Duke's written replies together with interviews given.

エリントンはその人生において広範囲にわたる「専門家」や音楽評論家からの幾多の攻撃や貶めからジャズを守り続けてきた。マーク・タッカーの「The Duke Ellinton Reader」はデュークに対するインタビューとその回答を詳細に記録している。

In 1962 in an interview with Stanley Dance, Duke discussed musical categories :
"People are told that they must never drink anything but a white wine with fish or a red wine with beef. The people who don't know, who've never been told that, who've never been educated along these lines - they drink anything.I suspect they get as much joy out of their eating and drinking as the other people.

It's just like people who listen to music.They don't necessarily know what they're listening to.They don't have to know that a guy is blowing a flatted fifth or a minor third,but they enjoy it,and this I consider healthy and normal listening.

A listener who has first to decide whether this is proper when a musician plays or writes something - that's not good.It's a matter of "how does it sound?," and, of course, the sound is modified by the taste of the listener.

1962年、Stanley Danceによるインタビューでデュークは音楽のカテゴリについて以下のように語っている語っている:

人々は魚を食べるときには白ワイン、肉を食べる時には赤ワインを飲むべきであると言われている。こういうことを知らず、言われておらず、また教えられていない人々は何でも飲む。こういう人は食生活において他の人々と同じくらいの楽しみを享受しているのだと私は思う。

音楽を聞く人々も同様である。彼らは何を聴いているのかということを知る必要はない。演奏者がフラット5thを吹いているとかマイナー3rdを吹いているとかを知っていなくても音楽を楽しむことができる。そして私はこれを健康的な、ごく普通の音楽の楽しみ方だと思う。

音楽家が演奏したり曲を書いたりするときに、まず最初に「これは適切であるか否か」と決めつけるリスナー、これは良くない。 「それはどういうサウンドであるか」が問題なのであり、そしてもちろんその「サウンド」はリスナーの趣味によって変わるものなのだから。

The listener may like things that are pretty, what we consider pretty or schmaltzy. Another may like a graceful melodic line, with agreeable harmony under it and probably little romantic element. A third may like subtle dissonance, while a fourth may go for out-and-out dissonance.A fifth may have a broad appreciation and enjoy all kinds.

But what is really involved here,I think,is personal taste rather than categories. Music itself is a category of sound, but everything that goes into the ear is not music.
Music is music,and that's it. If it sounds good,it's good music,and it depends on who's listening how good it sounds."
......................

美しいもの、我々が美しいあるいは極端にセンチメンタルだと考えるものを、あるリスナーは好むかもしれない。また別のリスナーは適度にロマンティックなエレメントと適正なハーモニーに支えられた優雅なメロディラインを好むかもしれない。また別のリスナーは四度の「out-and-out」な響きを持ったはっきりとした不協和音を好むかもしれない。別のリスナーはあらゆる種類の音楽を楽しめる広い受容力を持っているかもしれない。

しかし、ここで最も考えなくてはいけないのは-私が思うに-カテゴリではなくて個人の好みだ。音楽自体は「音」のひとつのカテゴリだが、耳に入るすべての音が音楽になるわけではないのだから。

音楽は音楽であって、それ以上でも以下でもない。それが良いサウンドを持っていれば良い音楽であるが、それは聞く人が何をもって良いサウンドとみなすかに依存する。

The exact quote referred to in the thread title was from another
1962 article in Music Journal titled "Where is Jazz Going".

Towards the end of a fairly long article, Duke said

"As you may know,I have always been against any attempt to categorise or pigeonhole music,so I won't attempt to say whether the music of the future will be jazz or not jazz, whether it will merge or not merge with classical music.

There are simply two kinds of music,good music and the other kind. Classical writers may venture into classical territory, but the only yardstick by which the result should be judged is simply that of how it sounds.If it sounds good it's successful;if it doesn't it has failed.
As long as the writing and playing is honest, whether it's done according to Hoyle or not, if a musician has an idea,let him write it down.
And let's not worry about whether the result is jazz or this or that type of performance. Let's just say that what we're all trying to create, in one way or another,is music.

問題の「良い音楽」は「ジャズの行方」という「Music Journal」の1962年の別の記事に現れる。かなり長い記事の終りのあたりでデュークはこう語っている:

ご存じのように、私は音楽を分類しようとするあらゆる試みに反対してきた。だから私は未来の音楽がジャズになるかジャズにならないかとか、クラシックに統合されるかどうかとかについて語るつもりはない。

音楽には二種類ある。善い音楽とそれ以外だ。クラシックの作曲家はクラシックの分野の中で冒険をするだろうが、それが判断されるべき基準は単純にそれがどういうサウンドであるかということだけである。それが良いサウンドであればであればそれは成功であるし、そうでなければ失敗だ。制作と演奏がまっとうになされているのなら、それがホイルの法則に則っていようがいまいが、音楽家がアイディアを持っているのなら書けばいいのだ。

そしてその結果がジャズであるかどうかとか演奏の様式がどうだというふうなことは気にしないでおこう。我々が様々な方法で創造しようとしていることは音楽なのだということだけを言っておこう。

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コメント

なるほど、この言葉にはこんな背景があったんですね。
でもって、エリントン伯は「悪い音楽」という言葉は使っていないのですね。

ところで次の文は違うと思います。

A third may like subtle dissonance, while a fourth may go for out-and-out dissonance
別の(3番目の)人は微妙な不協和音を好むかもしれず、一方、別の(4番目の)人は完全な不協和音を好むかもしれない。

out-and-out
adj : complete and without restriction or qualification; sometimes used informally as intensifiers

動詞のsoundはキーとなるフレーズで難しいですが、名詞のサウンドとするとちょっとニュアンスが変わってしまう気がします。
if it sounds good「(心地)よく聞こえるならば」というようなことでしょうけど、結局あまりよい訳が思いつかないですねぇ。

それから、according to Hoyleはイディオムだから「ホイルの法則」とするとかえって分からないのではないかと思います。私は知らなかった。

こんなことを書いたことがありますが、認識を改めました。
http://homepage2.nifty.com/vibes/diary/good-bad.htm

投稿: taki | 2010年5月13日 (木) 00時42分

ツッコミ、多謝です。

「subtle」ってそうだったんですね。何か別の単語と間違えました。out-of-outっていうも実はよくわからなかった。

うむ、「Sound」は難しかったですが、この辺も含めてまぁ勢いで乗り切ってやろう、と。

Hoyleってなんでしょうね? わからなかったのでまぁ雰囲気だけ入れとけ、と思ってあんな訳にしました。

で、結局エリントンが何をいいたかったのかは今ひとつ良く分からない、と。

投稿: Picks Clicks | 2010年5月15日 (土) 22時58分

辞書使わずにここまで訳したのですか、すごいですね。

しかしオンライン辞書を使わないとはPICKS_CLICKSさんらしくないような。

手軽なのはこちら(多少怪しい訳もあり)
スペースアルク
http://www.alc.co.jp/

Hoyle
http://eow.alc.co.jp/hoyle/UTF-8/?ref=sa

Cambridge, Webster, Longmanなどなど英英オンライン辞書はとても充実してます。

私はフリーのWordnetをPCに入れてます。

Wordnet
English
http://wordnet.princeton.edu/
日本語
http://nlpwww.nict.go.jp/wn-ja/

ごくたまにですが、バイトで翻訳してるので、複数の電子辞書を買って、串刺し検索ソフトJamming(シェアウェア)で検索してます。DDWINがフリーソフトだったはず。

投稿: taki | 2010年5月16日 (日) 15時40分

オンライン辞書は使ってないですね。ご紹介されたものを使ってみようと思います。

PCにアプリケーションとして、古くて非力な辞書を入れてるんですが、これがあんまり頼りにならなくて、これで分からないと想像で訳したりしてます(するなよ)。

投稿: Picks Clicks | 2010年5月16日 (日) 22時04分

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投稿: dulgaffingilm | 2010年5月23日 (日) 11時57分

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投稿: dulgaffingilm | 2010年5月29日 (土) 03時47分

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