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2010年12月 6日 (月)

ペンタトニック・スケールで悩む

takiさんのblogで、「ペンタトニック・スケールは世界共通」という話があったので、私もその昔大変お世話になったペンタトニックについてはいろいろと思うところもあるので、トラックバック的に書いてみようかと。

私も、ペンタトニックスケールというのは民族国家を問わず、世界的に受け入れられるものであると考えています。それはおそらく原始時代から人類に刻み込まれたものだったのではないかと思うのです。

まずペンタトニック・スケールにはメージャー・ペンタトニックとマイナー・ペンタトニックとがあるんだけれども、私はマイナー・ペンタトニックしか(意識して)使ったことがない。でもこれはAm7(11)とC6(9)が同じなのか違うものなのか、という程度の議論なので「どっちでもええやんか」ということにする。ルート無視のモード主義者の私としては当然のことである(あ~、言っちゃったよ)。

Am7(11)から話を始めてしまったが、あとの都合があるのでEm7(11)のマイナー・ペンタトニック・スケールから話を始めることにする。使う音は[E、G、A、B、D]の5つである。半音単位の音階で図示すると次のようになる。


EFF#GG#ABbBCC#DD#E
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RootMinor3rd11th5th7thRoot

「E-minorPenta.mp3」をダウンロード音にするとこんな感じ。

しかし、私はこの音階を次のように解釈する。

RootであるE、ドミナントのB、サブドミナントのA、と、それぞれの全音下の音でペンタトニック・スケールが構成される。ただし、ドミナントの全音下がサブドミナントのAと重なるので3×2-1で5になる。

図示するとこんな感じ。感じだけなので、図示してもあんまり意味はないかも。


AA#BCC#DD#EFF#GG#A
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DominantTonicSubDominant

で、皆様ご存知のとおり、ドミナント、トニック、サブドミナントはそれぞれ4度の音程で隔たっている。それに対して、上で図に書いてまで説明したように、それぞれの全音下の音がスケールとして選ばれている。全音ってことは、つまり4度の関係を2回繰り返せば(つまり、4度進行を2回やれば)作り出せる音程なので、やはり4度の関係ということがなにか重要なファクターなのではないかという仮定ができそうだ。

何が言いたいかというと、Eのマイナー・ペンタトニック・スケールは、
E→(4度の音程)→A→(4度の音程)→D→(4度の音程)→G

というふうに出来ている、ということだ。おっと、Bも忘れちゃいけないので無理やりこの中に入れると、

B→(4度の音程)→E→(4度の音程)→A→(4度の音程)→D→(4度の音程)→G

ほらね。これらの音はどこかで見た音列でしょう? Bを後ろに持ってきてEADGBとしたほうが分かりやすいかな?

ではなぜG→(4度の音程)→Cとならないのか、というと、それは「CはBに近いから」ということだと思う。EADGBという5つの音はオクターブをうまくほぼ均等に5つに分けているので、収まりがいいということなのではないだろうか。

1オクターブは皆様ご存知のとおり12半音だが、これを5等分すると2.4半音ということで、上の表に示したように2ないし3半音で隔たっているこの5つの音は、1オクターブをほぼ均等にピタゴラス音階の上に乗せている。

では、ピタゴラス音階に乗せないとどうなるか? つまり、本当に2.4半音ずつ隔たった5音で音階を作るとどうなるか?っていうと、こうなります。周波数は[330, 379.07, 435.43, 500.18, 574.56, 660](Hz)です。なんだか、ちっとも共感できないですね。耳がピタゴラス音階に慣れきっているからですかね。

「E-minorP-even.mp3」をダウンロード平均律5音階

ついでに触れておくと、Eマイナー・ペンタトニック・スケールに対してBbの音を効果的に使うことができます。いわゆるブルージーなフラット5thですが、この音はルートであるE音からちょうどオクターブを2等分した6半音だけ隔たっています。よくわからないけれども、ルートとマイナー3rdが3半音(4分の1オクターブ)なので、このフラット5thはオクターブを4等分した「平均律4音階」を想起させる効果があるののではないか、と思ったりもします。

本当に「平均律4音階」にしようと思ったら、ナチュラル7thじゃなくて6thを使えばいい。そうすると、平均律4音階、つまりディミニシュドの暗い音階になってしまいます。


さて、ではなぜ4度の音程が原始的に根源的なのでしょうか? 正確に言うと、なぜ私はそう考えるのでしょうか?

それは周波数領域において、周波数が2倍になると音階が1オクターブ上がり、周波数が3倍になると1オクターブと5度上がる、ということに由来しています。1オクターブ上とはいえ、5度は5度ですからね。そして5度ということはつまり4度ということでもある、と。ここはちょっと強引ですが。

自然に存在する音は、先の「平均律5音階」のような純音(基本周波数のみで出来ている音)であることはまれで、必ずと言っていいほど倍音を含んでいます。倍音成分によって「音色」が決まるのですが、倍音はその次数が高くなるほどにその強度が少なくなるので、普通の人間に聞き取れるのは10倍音くらいですか?

実際に倍音を合成してみたのですが、あんまりはっきりとはわからないかもしれません。

「overtones330.mp3」をダウンロード純音に倍音を足す実験。

3秒間の音が4回鳴ります。最初が330Hzの純音、二つ目が330Hzに2倍音と4倍音を足したもの、3つめが330Hzに3倍音と5倍音を足した物、最後は2,3,4,5倍音をテキトーに足したものです。2倍音、3倍音だけを足したものも作ってみたのですが、それだけだと不自然でひとつの音に聞こえなかったので、それぞれ高次偶数倍音、高次奇数倍音を足しました。

ギターの弦における倍音の話もしたいのですが、長くなるのでスキップして管の共振という話に行きます。

この図は両端が開いた管における共振の様子を示しています。これは開管振動といいまして、トランペットやトロンボーンなどの金管楽器が最低音を出している時の様子ということになります。曲線が二本描かれていますが、これは空気が振動している様子を表しているつもりです。あぁ、やっぱりギターの弦の話をスキップしないほうが良かったかな?

両端が開いた管が共振しているとき、両端で空気の動き(振動)が最大となり、真ん中では圧力変化が最大となります、その代わりに真ん中では空気は振動していないのです。トランペットのように両端で空気が振動するような楽器では、真ん中辺りに圧力変動が最大となる点があるはずです。

Kaikan

Heikan一方、こちらは管の片方が閉じられている閉管共振です。閉じられた側では空気は振動できないので、ここで圧力変動が最大となります。閉管振動では開管振動の半分の長さの管で同じ周波数(音程)の音を出すことができます。人間がある周波数で声を出しているとき、この閉管共振を行っているのだと考えることができます。

次の図は開管共振で2倍音に共振しているところです。圧力変化が最大にある点が2箇所できています。

Kaikan2

Heikan21こちらは閉管で2倍音に共振させようとしているところですが、開いた方の口で圧力変化最大にしなければならないのに、それができないわけですから、この周波数では共振できません。閉管では2倍音に共振させることはできないのです。

Heikan3こちらは閉管で3倍音に共振させているところです。開いた口のところでは空気振動を最大にすることができて、共振しています。

というわけで、人類位に限らず、声道を共振させて(閉管共振させて)音を出すと、基本周波数(一番低い声)の2倍音よりも3倍音のほうが共振させやすく、したがって、5度音程というものが自然と身につく、ということからペンタトニックにつながっていったのではないだろうか? というのが私の考えるところです。

例えば男同士で「おい」「ん?」という受け答えをするときに、その音程が4度だとか5度だとかも聞いたことがあるのですが、これはどうもはっきりしません。一応一定の音程にはなりそうなんですけどね。


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コメント

初めまして、最近ロックギターに目覚め教室に通う熟年ギタリストです。
教室のレッスンがアドリブに差し掛かりペンタトニックとはなんぞやと思ってあちことみているうちにこの記事にたどり着きました。すごい、こんなこと初めて読みました。ああ、こういうことだったのかと納得に次ぐ納得。素晴らしいです。心から感謝します。ありがとうございます。
#だからってギターの腕は上手くなるわけでないのですが・・・

投稿: 悩める足 | 2016年11月12日 (土) 12時21分

コメントをありがとうございます。

ご興味ございましたら、以下のような投稿もご参照ください。

ピタゴラス音階で悩む
http://picksclicks.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/post-0ccc.html

非ピタゴラス音階で悩む
http://picksclicks.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/post-0ccc-1.html

ドレミファソラシドで悩む
http://picksclicks.cocolog-nifty.com/blog/2014/01/post-4c43.html

投稿: PicksClicks | 2016年11月13日 (日) 11時27分

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