朝鮮半島の中華思想に悩む
面白がっていちゃいけないんだろうけれども、北朝鮮という国はなかなか一筋縄ではいかないというか、常識では思いつかないことをする、とかねがね思っていた。それはつまり日本人の常識は通用しない、ということなんだけど。
昨年は韓国の巡視船「天安」を爆沈させ、延坪島と砲撃するなどの無茶をしつつ、各国に食料の無償支援を要請したりする。
北朝鮮軍のジェット戦闘機が中国に墜落したのも昨年だったか。これは「故障による墜落」と言うことになっているが、パイロットが戦闘機で亡命を図ったのを北朝鮮軍がおそらくは遠隔操作で燃料カットかなにかの妨害工作をしたために墜落したのだと私は思っている。
そんな北朝鮮がまた意外性を見せてくれたのが2月の漁民漂流事件だった。韓国領に近い北朝鮮沿岸で漁をしていた漁民が風と潮に流されて韓国領に漂着してしまった。韓国は今ではそんなに無茶はしないので、これら31名の漁民を救助し、北朝鮮に送り返すつもりだった。
しかし、その31名のうちの4名が韓国に残りたいと言い出したので話がややこしくなる。韓国としてはある意味歓迎したのだが、それに対して北朝鮮は「31名全員を返せ。そうでなければ受け取らない。」というわけだ。
これにはある意味感心してしまった。よくまぁそれだけの嫌がらせを考えつくなぁ、と。韓国ではすでに残留希望の4名の名前まで発表しているから、この4名が送還されたら厳罰は必須である。韓国がそんな4名を返せないのが分かっていて、「その4名を返さないなら、全員を受け入れない。」というのは本当に嫌がらせ以外の何者でもない。結局は4面を残して27名を受け入れたのだから、本当に嫌がらせだったのだろう。
6月にも北朝鮮は「らしさ」をだしてくる。韓国が北朝鮮に秘密会議を提案し、実行したことを暴露したのだ。
韓国側にも焦りはあって、李明博大統領の任期があと2年を切ったので、なんとか対北朝鮮関連の成果を出したいが、天安爆沈と延坪島砲撃の件で北が頭を下げてくれなければ国民が納得しないし、かといって対北援助を止め続けていると、中国がどんどん存在感を出してくる。実際、中国は無償援助はしないものの、食料を大量に輸出していて(それでも全然足りていないのだが)、韓国が支援を絞っている意味は割と薄れてきているのだ。
そんな状況の中での秘密会談だったのだが、北朝鮮は「韓国が会談を乞うてきた」、「会談で現金を渡しで懐柔しようとした」というふうなコメントを付けて出席者名指しで秘密会談を暴露。つまり、この階段で何も得ることがないとわかったので嫌がらせにでたのだろう。
そんな北朝鮮の考え方を理解するヒントがこの本にあった。文春新書086「韓国併合への道」呉善花著。
この著者は韓国生まれの韓国人だが日本に長く住んでいるらしい。内容は現在の韓国人が読むにはちょっと刺激が強すぎる感じがする。たぶんこの本も韓国では出版できないと判断して日本で出したのだろう。
メインテーマは日韓併合で、そこにいたるまでの過程を検証しているので、これをNHKの大河ドラマでやったら面白いだろうなぁ、とか思うのだが、まぁそれはいいとして、この本の前半で日韓併合までの経緯が書かれていて、その頃の朝鮮半島に関する解説が非常に興味深いのだ。
当時の朝鮮(まだ南北に分かれていない)は中華思想を信奉していて、それはつまり、世界の中心としての中国がまずあって、その周辺国はその中国に倣って政治を行う。この政治というのは、さらに周辺の「遅れている」国家を指導し、かつ搾取することが含まれている。
中華思想は極端な中央集権主義であって、周辺国家の謀反を未然に防ぐための仕掛けがたくさんある。具体的ンは周辺国同士が結束することを極端に恐れるので、監視を厳しくし、周辺国家がお互いに信頼関係結べないように仕向けるわけだ。
朝鮮半島ではこの中央集権を基本とした中華思想を、そのまま小さな朝鮮半島の中で施行したので、極端の上にも極端な中央集権国家が出来上がった。つまり国内においても中央集権、分割統治、地方はお互いに信頼しあわないようにする、ということだ。
その結果、「家族以外は信用できない」というのが朝鮮半島の気風である。従って、朝鮮半島における政争は、誰が正しいとか政治的理念ではなくて、例えば李一族と閔一族との抗争、足の引っ張り合い、という形を取ることになる。
これを未だに忠実に実行しているのが現在の北朝鮮である、と言えば、感じが分かっていただけるだろうか?
で、そんな中華思想に凝り固まっていた朝鮮からみると、日本は中華思想も知らない野蛮な国で、中華思想に従って指導してやらねばならないのだが、日本には中華思想が入っていないものだから、日本にそんな気持ちは全然ない。「なんで日本は我々に頭を下げない?」という不満が朝鮮の人々の頭には常にあるのだろう。
韓国も軍政から民主制に移行してまだ20年くらいしかたってないのだから、まだまだその中華思想はあちこちに残っているようで、野蛮な国である日本に逆に統治されてしまった、という憤りは未だに熱く燃えているようだ。
翌日追記:
朝鮮における中華思想にはちゃんと名前があって、小中華思想というらしい。
引用すると、
「小中華思想(しょうちゅうかしそう)とは朝鮮で唱えられた中華思想(華夷思想)の一変種であり、自らを「中国王朝(大中華)と並び立つもしくは次する文明国で、中華の一役をなすもの(小中華)」と見なそうとする文化的優越主義思想である。」
「しかしこういう考えは朝鮮のみで、古代中国での朝鮮の位置づけは日本や琉球王国よりもはるかに下とされており、国家としての認知すらされていなかった。」
ということだ。
具体的な例、というと・・・、まぁいいか。
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