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2011年11月 8日 (火)

硬派クラシックヲタクに悩む

そんな訳で九州で久しぶりに従兄弟に会ったのだが、この人達が私より年配の兄弟で、そのお兄さんのほうがクラシック音楽ヲタクなのであった。

そういえば、この人が学生時代に私の実家へ遊びに来て母のピアノを弾きながら大声で何やら歌っていたことがあった。当時私の近所ではちょっとした噂になったらしい。

この人は全国紙の新聞記者だったのだが、文化欄で音楽評なんかも書いていたという筋金入りである。何年か前に定年退職したということだったが、九州から帰って彼の名前をGoogleで検索すると「音楽評論家・編曲家」という肩書きであちこちの役員なんかをやっている。

そんな彼に私が「ジャズギターなんか弾いてます」とか言ったものだから、彼の中の何かに火がついたらしく、「ブルースってあるよね?」「ミとソとシがフラットするんだろ?」「でも和音はフラットしないんだろ?」「そうすると、音がぶつかるよね?」というふうな形で音楽談議が始まったわけだ。

「ミとソとシがフラットするんだろ?」というのはなかなか面白い質問で、これはいわゆる西洋音楽の立場からみると、そういう理解になるんだろうな。確かに。ブルースでは和音としてはセブンスをつ開くことが多いから、和音では「シ」はフラットしているが、「ミ」「ソ」はメジャーなままだ。メロディラインの方ではミはたいていフラットするし、ソも常にではないが和音にかかわらずしばしばフラットする。シもフラットするが、こちらは和音もフラットしているのでどうということはない。

だから問題は「ミ」で、クラシックの楽理では3度の音は長三度か短三度のどちらかにならなければいけないわけで、私なんかの「半音違いの音がぶつかるなんて普通じゃん?」という理解を超えて「考えられへん!」ということになるらしい。つまり三度の音が二種類(長三度と短三度)同時に存在してはいけない、と。

でも、ポピュラー・ミュージックにどっぷり使っている私には和音とメロディはそれぞれ別のものであって、その瞬間瞬間にその整合性を問われるものではないと思っているのだ。和音の流れは流れとして存在していて、メロディはメロディとして、和音とも緩く関わりつつ時間軸方向のつながりを持って流れているので、時々刻々の和音との整合性よりもメロディとしての面白さ、自由さのほうが優先する、と考えている。

…というふうなことをその場ではうまく話せなくて、その場では「ブルースはペンタトニックでできているので」とかいう話をしたら「そうか、ペンタトニックを使わないといけないのか」「いや、いけないっていうんじゃなくて…。」などあって、なかなか話が噛み合わない。向こう様はあくまでもクラシックの楽理という川の向こうからの視点を買える気はないらしい(まぁ、こっちもそうなんだけど)。

ちょっと論点をずらしてやろうと思って、ドミナントのb9(フラットナインス)の話をして、「ソシレファのソが半音上がるんです」という事を言ってみると「それはなんの和音になるの?」「Vの和音になります」「ふうむ、その和音は全部短三度間隔だね」「おお、さすがです」なんて話があったんだけど、やはりなんとなくスレ違い。

彼は猫も杓子も道を歩きながら音楽を聞いている風潮が気に入らないらしく、「あれは一体何を聞いているのだ?BGMか?」とおっしゃるので、「BGMで何が悪いんですかね?」と心のなかで叫びつつ「あれは音楽を消費しているんですよ」と丸く納めたつもりになったり。

ケータイのメールアドレスをもらったので、またお会いしたらお話ししましょう、ということで別れたのだが、帰宅して車の中で聞いていた音楽の中でキース・ジャレットの「Facing You」という初期のソロアルバムを彼に聞かせてみたいと思った。なので、アマゾンで値段を調べると1680円くらいだったので(送料無料になる値段だ!)アマゾンから直接彼に送ってみた。CDが着く頃に電話してCDを送ったことを知らせると、「ぶつかってる?」「え?」「そのCDをでは音がぶつかってる?」「ああ、ええ、ぶつかってると思いますよ」ということだったのだが、はてさて、彼はあのCDをどう聞いただろうなぁ?

なんかこんなエッセイ集みたいなのを出していたりする。
Lettersfrommozart


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コメント

今日の教育TVで阪本龍一の番組がありましたが、エリック・サティーに「家具の音楽」というのがあるそうです。
要するに家具のように、そこにあっても気にとめないような、まぁ、どっかのクラブとかレストランで流れている、いわゆるBGMみたいな音楽を目指したらしい。
親戚の方の話を読んでいると、現代音楽とか無調とか12音階やらクラシックでもかなりわけのわからんことやってるような気が(よく知りませんが)するんですけど、そういうのはどうなんでしょうね?
そういえばモンクはブルーノートを何とかしようと半音重ねて弾いたんですよね。
Facing Youは僕のBlogに書いたんですけど、採譜プロジェクトがあってその中にいくつか採譜されています。

http://dark-intervals.com/transcriptions_en.html

投稿: taki | 2011年11月12日 (土) 23時40分

Keith Jarrette Real Book なんてものがありまして、その内容を見てみると、takiさんの「採譜プロジェクト」にあった譜面が収録されていました。いいのか?これ?

投稿: Picks-Clicks | 2011年11月20日 (日) 19時52分

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