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2013年1月27日 (日)

マイルス風フリーセッションに悩む

私見だが、ジャズには今までに二度の曲がり角があって、(録音されたものに限っての話だが)それは「KIND OF BLUE(1959年)」と「Bitches Brew(1970年)」という二枚のLPで、どちらもマイルス・デイビスの作品だ。私の認識ではジャズの演奏がこれら二者の前か、間か、後かによってある程度分かる、と思っている。

そのBitches Brewの話はどこかに書いたので詳しい話はそっちに譲るとして、とにかく「Bitches Bl]rewセッション」というのがあるということだったので、行ってみることにした。マイルスグループのライブ映像のような感じのセッションだったら楽しいだろうと思ったのだ。

平日の夜だったので、楽器としてはコンパクト・ギターにした。場所は東新宿のAcoustic-Artというライブハウスというか、行ってみてわかったのだが、地下のスタジオという感じ。厨房はないので飲み物しか出てこない。

現地に着くと主催者バンドが練習みたいなことをしていた。トランペットが入っているのだが、エコーとリバーブをたっぷりかけてまるでマイルスみたいだ。あれ? そういうこと?マイルスバンドのコピーやりたいわけ? それはマイルスが聞いたら怒ると思うぞ。
Acousticart

席についてしばらくするとセッションが始まった。その時点では写真の主催者バンドの他に先着のギタリストが一人来ていて、その人のあとに私が参加するということになっていた。そのギタリストは手ぶらできたらしく、声をかけられてから店のギターを選んでステージでチューニングなんかしている。手ぶらで来たんなら前もってやっておけよ。

演奏はBitches Brewからの曲で、何だったか忘れたが何にしろコード一発で、ギタリストはペンタトニックで攻めている。ロックギタリストなのか? そういうことはしたくないな。

ステージに呼ばれた時にはベースとキーボードがなんとなくGmあたりの一発の雰囲気をつくっているが、ここでGmでソロをとっちゃつまらないので、F系のスケールとかC7とかDmとかFの裏でBでやってみたら違和感を感じてDbにしてみたらまぁまぁよくて、考えてみたらそれは元々のキーGのウラだったりして。

そんな風にバックに合わせるというよりもむしろ壊していくような動きをしていると、キーボードの人はその意図に気づいてくれたらしくて、あおるような動きをしてくるのでこれはおもしろい、とまた調子に乗ってゴリゴリやる。指がうまく動かなくて思うように弾けないのがもどかしい。

そんなふうにいろいろやっていると、トランペットの人が入ってきてマイルス風なソロを取る。エコーにリバーブ、さらにはディレイまで入っているのでまるでマイルスだ、マイルス自身はきっとそういう真似っ子を喜ばないと思うし、私もそれはちょっとどうかと思うが、実際に一緒にやっているとまるで自分がマイルス・バンドに入っているような錯覚に陥ってなんだか嬉しい。これはいかんのではないか?と思いつつも嬉しい。きっとこれがこの「Bitches Brewセッション」の意図なんだろう。

そうしているうちに曲が変わって「The Chiken」になる。私はこの曲が好きでなくて、かつまたこの曲をやるようなセッションというのもあんまり好きではないのだが、このセッションの定番らしくていつもやることになっているようだ。曲の流れを上手くつかめないままになんとかこなしたが、前の曲で私が「合わせる気がない」ということがバレているので、まぁそんなものだと思ってくれているのだろう、と思うことにする。

そんな中、参加者が増えて6弦ベースを担いだベーシストがテレキャスを指弾きするギタリストを連れてきて、あとギタリストがもう一人、さらにドラマーも一人来た。このベーシストがリフをテキトーに続けて他のメンバーがそれに続く感じで乗って行く。テレキャスの彼が面白い感じでやっていて、やはりうまくアウトする感じになっている。これはおもしろいなぁ。ここで私も呼ばれてひと暴れする。

短い休息に続いてこれも定番らしい「Cantaloupe Island」をやるが、ここでは私は呼ばれなかった。キメがあるものには呼んでも仕方ないと思われたか。

さらに曲は変わってなんとフリーダム・ジャズ・ダンスである。こういう曲では主催者バンドがまずテーマをやって、そのあと参加者が入れ替わりソロを取るという形になる。この曲では(特にキメがないので)ステージに呼ばれてまた好き放題やらしてもらう。もうこのへんになってくると、「正解のコードを弾いたら負け」くらいの勢いになってきていて、みんなもうやることがめちゃくちゃ。テレキャスの彼なんかは弦を緩めて手で叩いたりしてる。

こういうのは、聞いている人のための音楽じゃなくて、本当に演奏者の演奏者による演奏者のための音楽という感じで、実際に聞くだけの人は店のオーナーだけなのでほぼ全員がそういう感じで音楽を楽しんでいる。何が正しいかとか間違いとか、何をやっちゃいけないとかそんなことは全く無いので、これは楽しかったなぁ。

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コメント

ちっとも悩んでないじゃありませんか。

投稿: ををつか(をたくな講師) | 2013年1月27日 (日) 09時44分

ふへへ。まぁやりたい放題やらせてもらって、「これでよかったんだろうか?」ってのがないでもない、というのがしいて言えば悩みかも。

投稿: Picks Clicks | 2013年1月27日 (日) 11時01分

こういうセッションにMalletKATを持って行って好き放題すると面白そうですね、まだ全然使いこなせてないけど。都会はやっぱりいろんな機会があってよいですね。

投稿: taki | 2013年1月27日 (日) 16時41分

セッションもいろいろありますけど、今回みたいに好き放題やらせてもらって、しかも怒られないっていうのはめったにないんじゃないかと。

マレットKAT持って駆けつける意義はあるかもしれませんね。

調べてみると、ホストバンドのベースやドラムの方はプロだったり教える立場だったりと言う方々だったようで、どうりで包容力というか、懐が広いと思いましたよ。

投稿: Picks Clicks | 2013年1月27日 (日) 18時29分

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