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2013年10月 6日 (日)

オフセットクランクで悩む

エンジンに関して随分前から考えていることがあって、というのはレシプロ型のいわゆるピストンエンジンの話なのだが、混合気を圧縮して点火爆発させた時に、その圧力をうまく回転力に転換できていないのではないのか? ということ。

なんのことを言っているのかというと、ほぼ上死点で混合気を爆発させた時にはクランクとコネクティングロッド(コンロッド)がほぼ一直線上に位置しており、クランクの回転角がほぼゼロの時には回転のためのモーメントアームがこれまたほぼゼロだから、爆発力のほとんどはクランクとコンロッドを疲労させることに費やされている、と思うわけだ。

Offset6 だから、この図のようにピストンの中心線がクランクシャフトを通らないように、ピストンの位置をずらしてやればいい。そうすればピストン内の圧力が高いうちにより大きなモーメントアームが得られ、高い回転力を得ることができるのはないか。

この考えはすでに古くからあるらしく、オフセット・クランクと呼ばれている。実用化もされていて、ホンダのスクーターや最近ではVitz、Fitなんていう人気車種にも採用されている。

しかし、いろいろ調べてみると、現在採用されているオフセットクランクは私の懸念している「モーメントアームを点火後の早い時期大きくさせて高い回転力を得る」のためにではなく、ピストン側圧の軽減とピストン速度分布の改善ということに重きが置かれているようだ。

ピストン側圧の軽減というのはよく分かる。それは無駄な力を発生させないということで、私の懸念とも通じるところがあると思うのだ。

ピストン速度分布というのも私の懸念とどっかでつながっているような気がしないのでもないのだが、ここんとこはちょっと私にはよくわからない。熱力学のエントロピーに関連しているのかなぁ、というくらいの。ぼんやりとした理解しかできていないので、カルノーサイクルとかオットーサイクルとかをもう一度勉強し直すともうちょっと分かるのかもしれない。


とにかく今のところオフセットクランクに関する説明をWEBで探しても、直球的に私の懸念に対してストライクになるものがないのだ。

なので計算してみた。ピストン中心線をクランク軸からオフセットすることによって、ピストン内圧力が高いうちに回転モーメント、つまりトルクをどれくらい稼ぐことができるのだろうか。
Offsettorq
結論を先に書くと、オフセット量をクランク長との相対値で0.66くらいにすると、オフセットしない時の13%増しくらいのトルクを稼ぐことができる。これは案外に低い値で、もっと改善されるのではないかと期待していたので、がっかりだ。

実際に採用されているオフセット量はVitzで0.12、Fitで0.17だという。まぁ0.66なんていう値にすると側圧が逆方向で大きくなったりするんだろうから、私の知らない他の要素なんかも考え合わせると、そのへんが落とし所なのかな。
Offsetclank

しかし、オフセットクランクによるトルク改善が(いい加減な計算の結果とはいえ)たったの10%余りというのは残念だ。何かエンジンの効率を飛躍的に増大させるもっとうまい方法はないのか。

Skewedtop_s で、こんな仕掛けを考えた。点火爆発が起こるクランク回転角がゼロの時に、力の加わる方向をなんとかクランクの円周方向に向けてやりたいという気持ちの現われである。

この機構は対向する2つのピストンが結合され、中央に位置する溝に沿ってクランクが回転することが前提となっている。基本的にはScotch Yokeと呼ばれる機構だが、クランクと接する溝に角度がつけてあるところが違う。

ピストンとクランクが接する溝に角度S(Skew)が付いているので、ピストン内の圧力のsin(S)倍の力が回転角(t)に対してモーメントアームcos(S+t)を稼ぎだすことができる。これはひょっとしてすごいことではないだろうか。

で、先行する技術があるだろうかと調べてみると、まずScotch Yokeというものがあって、これはかなり研究され尽くしているが、そこへ斜めの溝をつけるというのはまだないようだ。

しかし、計算してみると、あまり成績が良くない。これだったらオフセットクランクのほうがいいなぁってくらいなもので。

Skewedmiddle8_s で、よくよく考えてみると、この図で回転角がゼロであってもそれは上死点ではないのだ、と気が付いた。つまりSkewがS度ついているということは、単に普通のScotch YokeがS度傾いて設置されているというだけのことなのだ(ストロークが1/COS(S)倍になるから同じではないのだが)。うむぅ、だめか。

ほかにもピストン内にもう一つピストンを付けてコンロッドにおかしな応力を与えるなんてのも考えたが、こんなふうに部品が増えるのもいやだなぁ。 Scotch Yokeについて調べてみると、これも色々と面白い話があって、もともとは1920年台にBourkeというひとが実用化させていたらしいのだが、なにしろクランクと溝の摩擦を軽減させるのが難しかったらしく、なかなか陽の目を見ることができなかったようだ。

近年、オーストラリアの会社がスバルの水平対向エンジンを改造して色々実験をしていたようなのだが、「サイズがコンパクトになる、性能はそんなく悪くならない」という結論を得たらしいぞ。

まぁ、そんなわけで悩む価値のあるテーマではあるのだが、なかなか力不足でうまくは行かないもんだなぁ、と。


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コメント

色々な要素が有ると思いますが・・・・・
まず,圧縮点火の行程で圧縮された燃料に点火されるのは上死点の角度にして6°から30°位前ですね,これは,ピストンとクランクの関係が一番力を伝えやすい場所に来た時気筒内圧力が最大になるようにしてあるからですね。
ピストンの上死点で最大圧力が掛かるならお書きになった様な結果に成るんじゃないかな。

投稿: ををつか | 2013年10月 7日 (月) 07時59分

燃焼のことは難しいので避けて通ったつもりでした、そのかわりに「燃焼時間はゼロとする」というお断りを書くつもりだったのだが忘れてしまっていました。

投稿: PicksClicks | 2013年10月 8日 (火) 00時16分

斜めヨークなエンジンの特許公報を発見。

【特開2008-038885】

でもそれよりいい方法があると思うので、特許書いてみようかな。

投稿: PicksClicks | 2013年10月11日 (金) 00時07分

燃焼時間がゼロならなおさら上死点で点火する必要は無い訳で,クランクをオフセットしたりするのはそれなりの別の理由が有るように思えますが。

投稿: ををつか | 2013年10月11日 (金) 17時22分

計算を簡単にするために、上死点で圧力が最高になるという前提にしたかったのです。だから上死点で点火して瞬時に最高圧力になると仮定しました。

投稿: PicksClicks | 2013年10月14日 (月) 14時14分

上死点で最大圧力となるエンジンはないので,オフセットが構造が簡単で,効率が良いでしょう
通常はATDC10°あたりで最大圧力になるように設計をするので

投稿: あいうう | 2017年1月 5日 (木) 00時26分

なるほど、10度ですか。ありがとうございます。

投稿: PicksClicks | 2017年1月 5日 (木) 08時19分

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