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2013年10月 8日 (火)

「してはる」で悩む

小学校三年まで神戸に住んでいて四年生になると同時に大阪へ引っ越した。環境が変わることにそれほど抵抗はなかったが、神戸弁と大阪弁の差異には少々戸惑った。

特に違和感を感じたのが「してはる」という言い回しだった。神戸では聞いたことのない言葉だったので、その粘着的な言葉が嫌いだった。詳しいところはよく覚えていないが、「ねちゃつく言葉やなぁ」という印象を受けたことはよく覚えている。

嫌いだった「してはる」だったが、しかし大阪で暮らしていると、この言葉を使わないわけには行かないのだった。おそらくは一年も立たないうちに私も「してはる」を使うようになったのだったと思う。

「してはる」というのは中間敬語である。自分と相手の上限関係を曖昧にしたまま、しかし一応の礼儀は尽くしているという姿勢を見せるのが「してはる」なのだ。

例えば、年齢も性別も、ひょっとしたら国籍もなんだかよくわからないひとが(いや、国籍はちょっとまずいな)よくわからないことをやっている、という状況で、私は「え、あの…なにしてはるんですか?」以外に適当な言葉を思いつかない。

大阪に住んでいると、この中間敬語が醸し出す人間関係の中にからめとられてしまって、その結果「してはる」を使うことによる心地よい人間関係を築くことができるのだ。

学校を卒業して東京で仕事をはじめてしばらくして後輩もできてきたころ、1年下の後輩が「F田さん、これどうやってるの?」と話しかけてきたので私はムッとした。その時に初めて「してはる」の機能に気がついたのだった。

標準語では「どうやってるの?」を丁寧に言うと「どうやってらっしゃるのですか」になってしまって、その中間を表現する敬語がない。「してはる」はその中間をうまく埋めている「中間敬語」だったのだ。

大阪の人間関係はそうやって中間的な、上下関係をあえて曖昧にした人間関係がある。大阪である種のお笑いが発達しているというのも、「してはる」の効能なのかもしれない。

東京での生活で、私は大阪弁を捨ててしまった。上司と話している時に大阪弁だとまじめに話しているように受け止めてもらえないのではないかと思ったからだ。

いまや、仕事関係では自分からカミング・アウトしない限り関西出身と見破られることは少ない。見破られるのは相手も関西人だったりする場合だ。お互いに言葉の端々に関西訛りを聞きつけてしまって、お互いにガードが崩れて関西弁になってしまうのだ。

そんな状況だったのだが、ごく最近にまた新しい発見があった。最近大阪から首都圏へ転勤してきた若い人が上司(相当上の人)に対して「してはる」調で話しかけているのを聞いた首都圏育ちのひとが「すげーな、XXさんにあんな言い方して」と言っていたのだ。

つまり首都圏のひとにとって「してはる」は単に方言であって、「大阪では敬語」ということが理解されていないのだ。っていうか、それが理解されていないということを私が今頃になって理解した、ということなのだが。

あれれれれ? と思って家人に聞いてみた。「『してはる』って敬語だって知ってた?」「え?知らな~い。そうなの?」

ふむふむ、職場で早めに大阪弁をやめといたのは正解だったみたいだな。

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コメント

 chachaさんが関西出身であると言う事はご本人と直接お話させて頂いても感じる事は有りませんでした。何かの機会に「関西出身である」と聞いて多いに驚愕した憶えがあります。それは言葉だけでなく思考形態とか価値観とか私が関西出身者に感じる諸々が希薄であるのか,隠すのが上手いからなんでしょうね。東京で暮していますと,ことさら関西出身である事を雰囲気なり言葉なりで主張するヒトは多くても感じさせない方は少ないように思います。

投稿: ををつか | 2013年10月 9日 (水) 18時16分

以前にFirst Stageに案内していただいたとき、関西弁で会話してたような気がしますが、どうだったんでしょう。
私自身が名古屋生まれで純粋な関西人ではないので、気が付かなかったのかもしれませんが。

「してはる」と類似して少し使い方が違うのが「してやる」ですね。これも大阪の人間でないと分からない言葉でしょう。家内がよく使うんで慣れましたが、文字だけ見ると全然違う意味にとられますね。

投稿: taki | 2013年10月10日 (木) 00時52分

ををつかさん、

え~?驚愕するほどのことですかね?それに、「関西人に感じる」思考形態とか価値観とかって? それほちょっと効いてみたいですね。

案外に「隠れ関西人」というのは多いかもしれませんよ。ほらほらあなたのとなりにも・・・。

標準語しか経験がないとわからないと思いますが、方言で育った人間には方言センサーを持っておりまして、標準語であっても言葉の端々に垣間見える(自分と同じ)方言を鋭く嗅ぎ分けるんです。

takiさん、

昔からの知り合いの前で標準語をしゃべるのは逆に恥ずかしいですね。そういう時はちゃんとスイッチを切り替えてしゃべります。

問題は標準語に慣れきった関西人の集まりに出る時で、これはつまり高校(大阪府立)の関東同窓会がそうなんですが、お互いに最初は探りあいしながら標準語っぽいしゃべりなんですが、そのうちに標準語を貫くやつとかベタベタの大阪弁になるやつとか、「僕は高校の時から標準語だったよ」みたいなやつとかで、グダグダになります。

「してやる」はおそらく古い言葉で「していやる」が語源じゃないかと思います。奥さんは京都系でしたっけ? 京都と大阪の間には飛び地みたいにおかしな方言が点在していたりします。今いくよくるよ師匠の「そうやんかいさ~」みたいな。「していやる」には何かそれに近いものを感じます。

投稿: PicksClicks | 2013年10月10日 (木) 23時50分

えっと,私はヒトと接するとき,その出身に非常に気を使います,それは,生まれ育った東京山の手から都心部の高校に入学し下町で生まれ育った人達と接してその言葉や価値観の違いに驚き困惑した経験が有るからだと思います,そして全国からヒトが集まる様な学部の大学に入学し,ヒトは出身地方による違いと理系文系的思考法の違いも大きいんだな,と考えるようになったのです,長じて広告代理店に勤務するようになり「芸術系」てな思考形態を知ったりしたわけです。そんな環境でchachaさんと知りあい,何となく技術系で東京人的思考を感じていたのかも知れません,そこで,「驚愕」という事態になったのだと思います,もう30年も前の事ですがその時の驚きの感覚は今でも覚えています。
隠れ関西人と言いますと我が妻が東京多摩地区の育ちでご両親も房総のヒトなのですが,ご両親の仕事の関係で生まれは大阪なもんで「隠れ関西人」かもしれません,その大阪生活に義母が影響され大阪風の言葉使いが多少見え隠れします。

投稿: ををつか | 2013年10月11日 (金) 09時03分

30年前ってことはないでしょう。もうちょっと手前だと思いますが、ををつかさんと知り合った頃はちょうど都会の絵の具に染まりきったころだったかもしれませんね。

関西人としての自覚があってこその「隠れ関西人」なので、奥さんがそれに該当するかどうかは奥さん次第ですね。


投稿: PicksClicks | 2013年10月14日 (月) 14時11分

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