「誰でも絶対音感」に悩む
こういう本を読んでいる。著者は音楽業界から学究の道へ進んだというひとで、論文みたいに堅苦しくしたくないという配慮なんだろうか、内容は散文的で表現に無駄が多い。長々とBLOGを読まされている感じだ。
しかし、興味深いことが書いてあった。
ひとつは、脳の中で音楽を聞くことに対応する部分が言語を解釈する部分と近いこと。そしてもう一つが「誰にでも絶対音感はある」ということだ。
実はこの本をまだ読み終わっていないので、まだ他にも興味深いことが描かれているのかもしれないのだが(「何が音楽家を育てるか?」という章をを読み始めたところ)、いつ読み終わるかよくわからないので、フライング気味に書いてしまう。
で、絶対音感だが、その話の前に人が音楽を認識するのに二通りの方法があることをこの本は指摘している。
ひとつは、例えば「ハッピー・バースデイ」のように、良く知られているがこれといって代表的な演奏または録音(テイク)がない曲を認識する方法で、ひとはこういう曲を抽象化して記憶している。抽象化しているからこそキーが違っていても、テンポが違っていても、演奏する楽器が変わってもその曲であると認識ができるわけだ。
もう一つの音楽の認識の方法は、聞いた曲をそのまま、「まるでテープレコーダーで録音するように」記憶に刻みこむことだ。著者はこの「頭のなかのテープレコーダー」が非常に精度の高いものであることを実験で明らかにしたと言っている(この本は論文じゃないので詳しいことは書かれていない)。
つまりこのことを以って、著者は「絶対音感はだれでも持っている」と言っているわけだ。
普通、絶対音感というのは、ポーンと鳴らされた例えばピアノの音を聞いて「C#です。」とか「Abです。」とか答えることをイメージすると思うのだが、この著者が言う「絶対音感」はそれとはかなり違う。しかし、「絶対的な音程を記憶することができる」という意味であっても、これはなかなか勇気づけられる話である。「ドはこの音ですよ~」みたいな曲を作れれば、その曲(のテイク)を思い出すことによって「ド」の音をそらんじることができるのではないか。
で、早速やってみようと思っているのだが、なかなかいい曲を思いつかなかった。サウンド・オブ・ミュージックでジュリー・アンドリュースが歌う「ドレミの歌」を、アンドリュースの顔を思い浮かべながらその歌声を思い出し、口ずさんでみてキーを取ったらFだった。本当かな?ビデオがあるはずだから確かめないと。
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コメント
脳の音楽と言語を認識する部分が近しいと言うのは,前々から経験的に理解していました,音痴な私は他国語もダメ。音を覚える能力が皆無です。
イギリスの作家,セシル・スコット・フォレスターもその代表作「フォーンブロワー」の中で主人公は音痴であるので他国語の発音が全くダメ、と描いています。
投稿: ををつか | 2014年5月29日 (木) 23時07分
絶対音感、ってその定義は一般的では無いので
誤解する人が多いでしょうね。
でも、調性格、とか調性感もありますからねぇ。
難しいです。
投稿: Cello | 2014年5月29日 (木) 23時39分
たぶんその本に書いてある絶対音感は、ある音程を記憶していて、聞いた音と記憶している音との相対で絶対音程を知るというものだと思います。
実際にそういう人はいるそうですが、本来の絶対音感とは異なるものらしいです。
以前に似たことを書いてました。
http://taka-sumi.cocolog-nifty.com/taki_blog/2012/09/post-76e8.html
投稿: taki | 2014年5月30日 (金) 00時45分
ををつかさん、
>音痴な私は他国語もダメ。音を覚える能力が皆無です。
音じゃないと思うんですよね。もっと上のレイヤの話だと思うのです。音として記号化されたものを解読ないしは解釈するという過程において音楽と言語は似かよった処理がなされるということではないかと。
具体的な話として、私は楽器でアドリブするときに「言葉をしゃべるように演奏する」ということをやってきていたので、この話がすごく合点の行くものだったのです。
Celloさん
私も本文で書いている通り、一般的な意味での「絶対音感」とはちがいます。しかし、例えばイントロ無しでいきなり正しいキーで歌い始めるということが、練習(聞き込み)次第で可能になるということは勇気づけられるものがあります。
調性感に関しては例の「全全半全全全半」が関わってくるのだと思います。特に半音の音程を感知することがポイントになるんじゃないかと漠然と思っています。
実際、知らない曲に演奏で参加することもあるのですが(練習として、あるいはセッションで)、中に入って音を出せば調性はわかりますからね。
takiさん
「本来の絶対音階」というか、「いわゆる」絶対音感とは違いますね。でも訓練しだいでは何とかなりそうな気もします。だって、「Fの音を出してください」と言われてかなり近いところの音を出せるのだから、これは価値あることじゃないでしょうか。
私が音声で出せる最低音がEで、これはギターの6弦開放のおとなので、学生時代私はギターをこの方法で調弦していました(~こともあった、というのが正しいんだけど。)。
今思えば、イエペスの「禁じられた遊び」の最初の部分を精密に思い出すことができれば低音部の「E」と高音部の「B」をかなりの精度で出せるんじゃないかと思います。
…と思って今やってみたら高音部のBじゃなくてF#を出してしまった…。
投稿: PicksClicks | 2014年5月31日 (土) 10時43分