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2015年3月19日 (木)

砂上楼閣に悩む

Lottetowerこの絵はおとなりの国のソウルに建設中の第二ロッテワールドタワーというものなのだが、完成時には555mの高さになるという計画である。

555mというと、スカイツリーの634mより低いじゃないか、と言ってバカにしてはいけない。こちらはツリーじゃなくてタワーなので、その内容が違う。

どれくらい違うのかというと、スカイツリー全体の重さが3万6千トンであるのに対して、こちらは75万トンと20倍以上重いのだ。ツリーとは違ってなにしろ123階建てのビルなのだから。

そんなに重いものを建てて大丈夫なのか?

この絵を見て分かる通り、川(漢江)が見えていて、タワーの手前に池のようなものが見えるが、この池はもともと川の一部だったのだ。川が蛇行していた部分が切り離されて池となって残ったというわけだから、タワーの立っている部分はその昔には川だったところだ。

だから、地盤はきっと盤石というわけには行かないんじゃないかな?

絵の中でタワーの左側に道を挟んでなにやらあるのがロッテワールドというアミューズメントパークで、道路のタワー側はそれに対して第二ロッテワールドということになっている。第二ロッテワールドには12階建てのショッピングモールがあって、こちらはすでに昨年秋くらいから営業を開始している。

しかしこのショッピングモールは問題が山積みである。

まず水族館の水漏れを起こし、映画館では原因不明の振動があったりしたのでこれらの設備は営業を停止させられた。呼び物の設備が営業停止となったので客足は激減し、テナントが次々と逃げ出すという事態となった。例えば高級日本料理店が5年契約を3ヶ月で撃ち切って撤退したりしている。

他の設備でも、あちこちで床や天井にヒビが入っていることが報告され、「構造物じゃなくて化粧板にヒビが入っているだけです」「塗装が乾燥したのでヒビが入るのは当たり前です」「ヒビではなくて演出です」という弁明にもかかわらず客足は遠のく一方で、一日あたりの来客数はオープン当初の半分くらいになったという。それでも半分来るっていうのは大したものだと思うけれども。

また、この第二ロッテワールド周辺では道路の陥没事故が多数報告されている。

で、タワーなのだが、こちらにもヒビが入っていることが報告されている。

Clacksこれはタワーを支えているメガコア柱と呼ばれる柱で、タワー全体を8本の柱で支えている。その5階、8階、9階部分のメガ柱に計11か所の亀裂が発見されたのが2012年の10月だ(2013年の2月に報道された)。

2015年3月現在で96階まで骨組みができていて、コアはまだそこまで行ってなくて、50階くらいまではメガコア柱ができてるんだったかな?33階まで出来ているというのはどこかで読んだのだが。完成予定は2015年10月とか、2016年とかの声もある。

だから亀裂が発見された当時はまだ30階くらいだったのかな?なんにしても荷重が75万トンという総重量のまだ半分も行かないうちにこんな亀裂が入って大丈夫なのか?

大体、当初(1998年)に143m、36階建てということで建設を始めて、その後2回の計画変更で555m、123階になったということなのだが、その変更の時に計画の見直しをちゃんとやってるんだろうか? フェリーSewol号の事故とか、ナッツリターンとか見ていると、そういうことを平気で無視する体質なんじゃないかと思ってしまう。

隣の国の話をここで心配していても始まらないのだけれども、本家のロッテ様はこの件に関して何か公式に発表していないのかと思って探してみたが、第二ロッテワールドに関しては何にもない。営業しているショッピングモールの話くらいあるんじゃないかと思ったがそれも見つからない。私の探し方が悪いんだろうか?

この話には前から注目していたのだが、今朝の新聞で「第二ロッテワールドの水族館と映画館が営業を再開」という記事があったので、それを機会に書いてみようと思った。一体誰が営業を許可しているのか知らないが、「水族館の水漏れは海外でもよくあること」「映画館の振動は低音用スピーカの振動で画面が揺れたのを誤解したもの」って、それでみなさん納得したってわけですか?

タワーの低層部はショッピングモール、中~高層は住居とホテルというんだけれども、ホテルに一泊くらいならともかく、こういうタワーには住みたくないなぁ。

ナッツリターンで思いだしたんだけれども、あの判決(会長令嬢の副社長に有罪:禁錮刑)はいただけない。あれは機長を罰しないといけないでしょう。機長を罰しておけば、また同じようなことがあった時に「そんなこと(リターン)したら私が罰せられます」と言って機長が会社幹部の命令を拒否できる。

一方こんな判決が出ると、今後機長はルールよりも会社の幹部の言うことを聞くのが法的に正しいということになってしまう。司法機関がポピュリズムに迎合してしまうというのは法治国家としてあるまじきことで、これでは「共通の価値観」を持ってられないよ。

3月24日追記:

そう言えば彼の国には「仁川タワー」という計画もあったのだった。当初の計画では2012年に完成する予定であった高さ587m、151階のタワービルだが、2008年6月に着工式を行ったまま2015年現在でまだ手付かずである。リーマン・ショックもあったが、仁川市に誘致予定であった外国企業の誘致に失敗し、3000億円という建設費用を捻出できなかったのが原因とされる。

4月5日追記:

Seoulairport ちょっと書きそびれていたのだけれども、このタワーの南6kmくらいのところにソウル空港というのがあって、これがなんと地図に載っていないが、Googoleマップの空撮写真で見ると丸見えというVIP専用空港ということなのだが、この図でご覧のとおり赤丸で囲んだ第二ロッテワールドタワーが微妙な位置にある。

離着陸の時にタワーが邪魔になるので(いや、タワーによる気流の乱れが飛行機に影響を与えるという話だったか)、空港の滑走路の角度を3度変えたいという話が持ち上がり、そのための費用をロッテに請求しているのだが(誰が?)、もちろんロッテはそれを断っている、ということがあるらしい。そんな場所に建築を許可したのは誰なんだ?

それはそれとして、先週あたりに第二ロッテワールドではまた漏水騒ぎがあり、地下二階の駐車場が水浸しになったとか。ロッテ側は「雨が降ったからです」といっているが、それにしては量が多いんじゃないのか、という話もあり。

一方、タワーの南側にある石村湖という、その昔は川の一部だった池の水位がどんどん下がってきていて問題になっており、漢江から水をポンプで引いてきて注ぎ足しているというのだが、いやぁ、その水のゆくえをちゃんとチェックしておかないとまずいんじゃないのか?

さらに追記:今年の2月初めに自動車メーカのヒュンダイが115階/571mの本社ビルをカンナムに建てる計画を明らかにした。もう20エーカーの土地を100億ドル出して購入したというから本気なんだろうな。

20Acreというと8万平米くらいらしい。300m四方で9万平米だからそれよりちょっと小さいくらいか。

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コメント

我が国の場合,地震ってのが怖いんで建物の強度に敏感ですね,それから物作りが大好きって国民性とも関係があるかな。
昔ニューヨークに行った時,10階建てのビルの1階の柱がこちらの電信柱より細いので「へー地震の無い国はこれで良いのか」と感心し,グランドセントラルとか鉄道駅の柱の無い大空間も地震の無い国は良いな,こいつら人の家を兎小屋ってバカにするけど地震の怖さをしらねえな」とか思ったもんです。
お隣の国も地震が無いから「建築物は最低限の構造と強度が有れば良いよ」と思ってるんでしょうね。

投稿: ををつか | 2015年3月20日 (金) 08時26分

彼の国では地震がなくてもデパートが崩落したり、

http://www.sydrose.com/case100/402/

橋が落ちたり、

http://www.sozogaku.com/fkd/cf/CD0000144

エアロビでビルが揺れたりしてるんです。

「2011.7.20:ソウル市東部の広津区にある39階建ての複合商業ビル「テクノマート」で原因不明の揺れが起きた問題で、安全検査をした専門家は19日、12階にあるフィットネスクラブでのエアロビクスが原因との暫定結果を明らかにした。」

日本ほど多くはないとはいえ、彼の国にも地震はあるので、ちゃんとした規格とか検査があるはずなんですが、そういうのがどうもうまく機能していないようですね。

投稿: PicksClicks | 2015年3月20日 (金) 11時37分

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