ナイロン弦の処理で悩む
連休前の話だが、あるライブハウスでギタリストが「ガットギターを弾き始めたが、ナイロン弦の結び方がわからない。止まることは止まっているけれども、音が悪いのでやり方が悪いのだと思う。」ということを話していた。
話していた相手が私じゃなかったので深くは追求しなかったのだが、これはきっと弦の取り回しが悪いのだと思った。
これは一般的なガットギターの「結び」の部分だが、1弦から3弦まではナイロンのままの弦なので滑りやすいからこの写真で見るようにちょっと絡めるようにする。
4弦~6弦は巻き弦と言って細いナイロン線を束ねたものを金属線で巻いてあるので、弦同士が交差するところでは滑りにくいからこういう絡ませ方はしない。写真にも写っているように、手前側に見える4弦はシンプルに引っ掛けてあるだけだ。
で、弦の取り回しがどうだこうだというのは、写真の中で白く見えるサドルの右側にある弦の部分にどれだけ伸びしろがあるんだろうか? という話なのだ。
これはガット弦ギターの弦を張り替えた時にいかに早く安定させるかということにも通じるのだが、サドルから実際に弦を固定している部分までの長さが問題だと思っていて、この長さはできるだけ短くしないといけないと考えている。
写真で手前に見える4弦ではサドルからの弦は穴を通って一旦折り返し、もとの弦と交差して写真右下でまた弦と交差している。この下の方の交差でサドル方向に引っ張られる弦の張力によって弦が固定されているので、サドルからこの2つ目の交差までの(余分な)長さが問題になる。
弦を弾く(はじく)と、一時的に弦の張力が増すので、この「サドル以降の(余分)な長さ」の弦が引っ張られてサドルのナット側の実際に振動する有効長が一時的に増えて音程が下がってしまう、ということなのではないだろうか?
1弦~3弦においてそういう現象が出ているのなら、ひょっとして弦同士の絡め方が多すぎるのではないだろうか?
サドルから弦が固定されるまでのあいだでは、張力が一定であることが望ましいのだが、弦を張り替えた直後にはサドル以降にもいろいろな接触点で摩擦があったりするので張力が一定でない。弦の余分な部分の張力が一定になり、そのそれぞれの部分での張力に対する弦の伸びが安定した時に、やっと音程が安定する。普通は安定するまでに1週間位かかったりする。
ということのなので、以前話題になった「スーパーチップ」というのも、実はこの「余分な長さ」を短くする事によって効果が出ていたのかもしれない。スーパーチップを使えば、弦を折り返したりしなくて良いので、余分の長さは1/3程度になる。これは耳の良い人だったら違いがわかるのではないだろうか。
で、弦をはじいた時に音程が変わるものなのだろうか? と思って実際に測定してみた。先に結果を言ってしまうと、大して変わらなかった。これは使用したギターの弦がさんざん弾き倒して弦も究極的に安定しているので違いが出なかったということなのではないかと思っている。今度弦を替えたらまた測定してみよう。
とりあえず測定したものをここに書いてみよう。
測定したのは愛用しているHEG120NTというエレガット。エレガットだと余計な雑音が入りにくいので。1弦~3弦は標準的な2回からめになっている。
4弦には弦同士がサドル側で交差する部分にビニルチューブを巻いている。これはこの部分で弦が何度か切れたことがあったので、その保護という意味と、ここでの摩擦がなんだか不安定要素になっているような気がしたので入れているのだが、このビニルチューブ自体がまた不安定要素になっているのかもしれない。いまのところ不都合がないのでこのまま使っている。
1弦に関して言えばこうやって弦同士がぴったり密着しているので、おそらく張力の不均衡ということはないのだろうと思う。
その弦をはじいた音をPCに取り込んで見るとこんな波形を得る。
この波形をアタマから100mSごとに周波数分析してみたのだが、最初からこんな感じで、後になっても変化が見られない。ピーク周波数は328Hzで「E」だと言っている。それは正解。
なので、波形をさらに細かく見ていって、ゼロクロスで周波数を測定してみることにする。つまり下の図で赤線の距離を測定して時間差を測り、その逆数を取って周波数とする。
そうやって得られた周波数推移がこれだ。
最初にがっくり落ちているのがまぁ予測通りと言えなくもないのだが、数mSくらいの時間で30セントくらいの音程差だから、これを聞き取れるひとはいないだろうなぁ。
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