電気飛行機に悩む
6月に開催されたパリの航空ショーでエアバス社が二人乗りの電気飛行機「E-Fan2.0」を展示していたらしい。
興味深いのはその仕様で、機体重量500kg、全幅31フィート、巡航速度136マイル/時、モーター2基の「総合効率」は60KWだという。航続時間は1時間。
こういう翼なら、滑空比は10くらいだろうか(1000m滑空すると高度を100m失う)。時速136マイルということは217km/hだから毎秒60m。無動力で60m滑空すると6m降下するから、高度を保って水平飛行するためには500kg×6m÷75kgm=40馬力が必要だ。
モーター出力の60KWというのは馬力に換算して80馬力なので、これはやっとなんとか上昇できる最低限の出力なんだろうと思う。
しかし、モーター出力が60KWということは、仮にモーターの効率を33%として消費電力はおそらく200KWくらい必要なんじゃないだろうか。その電力を1時間供給するためには200KWHの電池が必要だ。リチウムポリマー電池は体積1リットルあたり400WHということだから、体積にして500リットル必要ということになる。一方重量密度は200WH/Kgということなので、電池だけで1000kgになってしまう。
ということはモーター効率がめちゃくちゃにいいのかなぁ? 80%とかいう値になってしまうんだろうか?
モーター効率が80%だとすると、電池容量は75KWHで済むが、それでも電池の重量は375kgになってしまう。効率100%としても電池重量は300kgだ。モーターだけでなく、電池に付いてもなにか技術的なブレークスルーがあったのだろうか?
最近は電気自動車の発達で、モーターの技術もずいぶん進んでいるようだ。電気CVTとか言って、エンジンで発電機を回し、その電力でモーターを回すようなパワートレインを採用した自動車がすでに市販されている。モーターの効率なんてせいぜい20~30%だと思っていたので、電気CVTなんていう仕掛けが商品として成立するというのは実に驚きだ。
そういえば、テスラ社の電動スポーツカーの性能を試算してみて驚いたのはもう3年くらい前のことであったか。
翌日追記:
ををつかさんからいただいたコメントを元に調べてこんな表を発見した。
これは日本電機工業会が今年度から始めた「トップランナー」という称号(?)で、つまり世界でトップレベルを目指すための目標値だが、その「トップランナー・モーター」の効率目標値が90%を超えている(クリックで拡大します)。
50Hz、三相四極、速度一定とかの前提条件があるが、それでも90%というのはすごいなぁ。基本的にいわゆる誘導電動機なんだろうけれども、インバータ駆動のブラシレスモーターでも同じくらいの効率が期待できるはずだ。
モーターって、逆起電力とか潜り抜けないといけない問題がいろいろとあるんだけれども、地道な努力で克服してきたっていうことなんだろうか? 大きなブレークするーがあったのなら知りたいところだ。
重量低減ということを考えているんだろうけど、補助輪があまりにしょぼいので注目してみた。これは引きこむのだろうか?
| 固定リンク
「飛行機」カテゴリの記事
- イオン飛行機で悩む(2018.11.29)
- SKYKINGで悩む(2018.05.27)
- 折り紙飛行機大会で悩む(2018.04.01)
- 三角全翼機で悩む(2018.02.12)
- 全翼機で悩む(2017.12.25)
コメント
写真の翼型ですと滑空比20を越えてると思います、セスナ152とかで滑空比15くらいです。
一般的なソアラー(無動力グライダー)で滑空比30〜40越え位です。
モーターの効率はJIS C4212で規格された「高効率三相モーター」で90%近くありますので、ご紹介の電気飛行機「E-Fan2.0」は成立してるように思います。
降下時のプロペラに受ける力を回生するとかもしてるのかな?
投稿: ををつか | 2015年7月18日 (土) 07時29分
ソアラーの滑空比が30というのは頭にありましたが、この機体の翼はアスペクト比も小さく、ウイングレットも中途半端で、滑空比20までは行かないだろうと思いました。ファンのシュラウドも揚抗比を悪くすると思います。
それより主輪が胴体真下にしかなくて、両翼端にソリがあったりするのが「大丈夫か?」という感じです。重量を減らしたいんでしょうね。
投稿: PicksClicks | 2015年7月18日 (土) 17時12分
主翼端のはウイングレットではなく上反角ですね。フランスのロバンという軽飛行機でもこのような翼型を採用しています。今どきは良い材料が有りますからこんな事が出来ますね。
機体の形とか脚の配置とかほとんどグライダーの設計ですね。
投稿: ををつか | 2015年7月18日 (土) 21時20分
翼型ってそういう意味で使ってたんですか。クラークYとかNACA2***とかそういう話かと思っていました。
この機体は主翼内にバッテリを格納しているので、機体重量の殆どを主翼内に持っているんですね。その関係とか、補助輪とかの関係でこういう形になったのかもしれません。
投稿: PicksClicks | 2015年7月19日 (日) 08時39分
翼型って言葉の使い方が間違っていましたね。ごめんなさい。今どきはこの辺だとスーパークリチィカル何とかかんとかいう翼断面形状だと思うのです。主翼内にバッテリーってのは配置として合理的ですね。電池の形状その物を翼の外板にするインテグラル型式になってるのかな?(一式陸攻みたいだ)。自動車にしても飛行機にしてもバッテリーのエネルギー密度を今の倍から5倍に出来れば世の中変わるって思います、10倍に出来れば天下取れる、とかね。
投稿: ををつか | 2015年7月19日 (日) 09時33分
電池のエネルギー密度を上げるには、電極を薄く、電極間隔を小さくして積層することになると思いますが、電極間隔はどこまで小さくできるんでしょうね? 極板上では化学変化が起こって電解物質が析出したりするんだろうから、そのあたりの制御がキモになるんですかね?
投稿: PicksClicks | 2015年7月20日 (月) 00時21分
リチウムイオン電池は電極表面のリチウムの析出が事故の元ですからね。リチウムイオンとは別の原理の電池は無理なのかな。
主翼内に重量物のバッテリーてのは合理的配置かもしれませんけど、運動性能は悪くなりますね。
アスペクト比の大きな主翼で翼が重いとなると軽飛行機のくせして旅客機並の操縦性とかになるんじゃ無いかな、写真からすると後ろが短くて尾翼容積も小さい感じだからな。
投稿: ををつか | 2015年7月20日 (月) 11時28分