日本の名前に悩む
ほとんどの日本の苗字が地理的な要素を持っている。これは明治維新の時だったか、おそらくは全国の戸籍を作成するために、それまで武家や公家にしか許されていなかった苗字が一般平民に許されるようになり、全国の村々で庄屋さんが「じゃぁお前は村の西だから村西だ。そっちのお前んトコは川口な。」というふうに決めていったのだろう。
そういうわけなので、たいていの名前はランドマーク的な部分を持っている。その部分に加えて相対的な位置関係を表す「上中下」「東西南北」「白発中(これは違う)」など、さらに概念的な文字「高、長」、「赤青黒」などが加わる。概念じゃないが、藤原家の関連家臣に許された「藤」の文字もこの扱いになるだろう。
ここで面白いのは、概念的な文字は2文字にはあまり来ないということで、もちろん例外はあるのだろうが、青山、青田はあっても山青、田青はまずない。図示してみるとこんな感じかな。
で、以上のようなことを鑑みて、日本人の名前を自動生成させてみた。下の名前についてもちょっと考えたことがあるのだが、面倒だしわりとどうでもいい気がするので書かない。また、日本中の苗字を網羅するのが目的ではないので「藤」という文字も敢えて外してある。
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コメント
はじめまして。いつも楽しみにROMさせてもらってます。それだけに今回の記事は残念。江戸期より以前から、ほぼ全ての日本人は苗字を持ってました。というのが現在の定説です。ちょっとググればすぐ出てきます。苗字を持たない人の代表は天皇。
1980年代ごろまでの日本史、とくに小中学校で教えられてたような「正史」としての日本史は、政策的で思想偏向のある、かなり杜撰な内容のもので、現在は少しずつ書き換えが進められてます。なので日本史に関して「のだろう」と思う事は全て、事前に下調べした方が良いですね。
苗字の成立経緯を問題にするなら、氏・姓・苗字の違いは考慮すべき。
青、赤、白などは、方位を意味してる場合もあるし、官位に由来してる場合もあるし、新旧や表裏を表してる場合もある。
「高」は、「鷹」の置き換え字である場合もある。本家分家の格差を示すため等の理由で。逆に、鷹が高の置き換え字の場合もある。
等々の事柄が無数にありますので、苗字の法則性は見出しにくい。こういった事も盛り込んだ生成プログラムが作れれば面白いかもですね。むしろポイントは、一般的な「もの」の名前と地名と人名とで、その命名ルールに違いがあるのか?という事かも。タブー意識も関係してそうです。
投稿: 牛込パン | 2015年8月28日 (金) 21時23分
どうもご贔屓にしていただいてありがとうございます。
江戸時代にはもう平民でも苗字を持っていたんですか。すみません高校時代から歴史は苦手でした。というより、TVや映画の時代劇からの印象で書いてしまったと言うのが正直なところです。
この投稿の意図としては、ある法則性(それが間違っていようと)を仮定して、その仮定に従って事象を生成させるのが面白いということなので、その法則性を補強していただけるのなら大歓迎です。
「氏、姓、苗字の違い」というのは考えたこともありませんでした。屋号っていうのもありましたが、これはまた別なのでしょうか?
関連して、外国の苗字(ファミリーネーム)ってどうやって決まったのかなぁ、というあたりにも興味があります。海外と交流するフォーラムで聞いてみたけれども、何も反応がありませんでした。
投稿: PicksClicks | 2015年8月29日 (土) 07時42分
仮定に従って事象を生成;
私は逆に、「二文字目に青は現れない」という予測の正しさを検証するためのプログラムが作れたら良いかなと思いました。30万種以上あると言われてる日本の苗字に対して、こういう事を調べ上げるのは大変ですから。日本語学会で発表したら、関心を持たれるかも知れません(ですが、持たれないかも知れませんすみません)。
屋号とか;
近代以降の国家、国民国家では、人格と名前は1対1対応で、戸籍等を介して個人と国家が紐付けられてますが、昔の人は一人で複数の名前を持ってる事も多かった。基本、偉い人ほど沢山の名前を持ってるのですが。
まず、生まれてすぐは幼名。成人すると大人の名前になって、死ぬと戒名が与えられる(これは今でもありますが)。戦国時代の武将は、出世する度に姓を変えたり(木下→羽柴→豊臣)、受領を名乗ったり。町人階級も、経済力や必要性に応じて受領や号・名跡を持ちました(俳号とか歌舞伎役者の名前とか)。
古代以来の諱(いみな)と字(あざな)を区別する習慣も根強く、それが平安期に源氏名を生み(と思うのだけど、これはソース曖昧)、しかし現代では逆に、国家の側から個人を識別する際の本名(つまり諱)はよそよそしい表向きの名前で、親しい間柄では仇名(あだな≒あざな)で呼び合うものと、いつの間にか用法が逆転してます。これ不思議。
等々、以上は名前のまめち諸々でした。個々の詳細はググればすぐに出てきます。
外国の苗字;
そもそも苗字が無い国というのがあって@モンゴルとアイスランド、つまりおそらく、集団的で継続的な農業が発達しなかった文化圏に苗字は無い、という事になるのかと思います。
ヨーロッパは農業文化の地域ですが、日本のような地名由来の苗字よりも職業由来型(ミラーとかベイカーとか)、また、誰それの息子型(ジョンソンとかピーターソンとか)の方が多そうに思われます。いずれも意味性は明白で、謎解き的な面白みなど無く、だからヨーロッパ人は苗字になんてとくに興味は無いかもですね。ファーストネームの方も、キリスト教圏ならほぼ全員クリスチャンネームだから、なんかみんなおんなじ。
物語コンテンツの、とくに非現実的で空想的な物語での登場人物の名前は、やはり非現実的な事が多い。少なくとも日本ではそうです。主要登場人物の名前には、意味性、象徴性が込められている。命名がイマイチな作品は、あまり人気も出ないみたい。この点、ヨーロッパの文学はどうなのでしょう?私はそっち系はほとんど読まないもので。
ドストエフスキー作品の人物名、地名には象徴、意味性の仄めかしがある場合が多いですね。ロシア語は(日本語ほどではないけど)、造語の自由度がわりと高いので。
投稿: 牛込パン | 2015年8月30日 (日) 02時59分
重厚なコメントをありがとうございます。
これから出かけないといけないので「ドイツのファミリーネームって面白いですよね」とだけ言い残して、コメントはまた後ほど。
投稿: PicksClicks | 2015年8月30日 (日) 11時29分
>諱(いみな)と字(あざな)
本名を明らかにしてしまうと呪いをかけられる可能性があるのであざなを使ったというふうな話を聞きました。
>「二文字目に青は現れない」という予測の正しさを検証するためのプログラムが作れたら…
どこかに日本人の苗字10万件のデータがあると聞きました。そういうデータがあれば統計を取るのはEXCELでも可能です。でも「山青」という苗字が実在するかどうかよりも、「山青」が自然に聞こえるかどうかということを知りたいですね。
西洋のファーストネームのバリエーションの無さはかなり絶望的で、チャーリーは多分カルロスとかカールとつながっているんだろうし、ブラジルのJOBIMと言うのは実はドコかでポーランドのSHOPINとつながっているのではないだろうか、とか。
個人名は時代の流れに沿ってそれぞれ勝手につけるのでしょうが、ファミリーネームはそれぞれの国や地域の政治的・文化的・歴史的背景によって一旦決まると何世代かに受け継がれるわけで、調べると面白いと思います。
ドイツではなぜか「馬鹿(Tumm)」「残念(Schade)」「悪魔(Teufel)」とか「犬(Hund)」とかいうのが割と普通にあるようです。実際私も「MeinRad(私の自転車)」という人と仕事をしたことがあります。これはどういう背景なんでしょうね?
投稿: PicksClicks | 2015年8月30日 (日) 23時05分
もともとは「江戸時代の農町民も苗字を持ってた」という事を指摘したいだけのコメントだったのですが、私自身の命名問題への関心が大きいため色々書き込んでしまいました。以後は自分のブログに書きます、そのうち。
ドイツのへんな名前;
どんな事にも説明は付く。宇宙の起源なら「神様が創った」でも「ビックバン」も、とにかく説明は出来る。へんな名前に関しては「方言を標準語に近い形に置き換えた」とか「元々の名前を隠匿するため」等々、説明の仕方はいろいろあります。
ただ、アルファベット表記の名前と漢字でのとを比べると気になるというか、分らないなと思う事は;
漢字というのは一つ一つが「意味の範囲」を持っていて、その字面には意味内容を拡散させる力がある、とまあ一応そう仮定して、
"Tumm"を日本語に置き換えると「馬鹿」
になるとしても、日本語(というか漢字語)の字面から呼び起こされる様々な意味性と同等なものを、アルファベットを並べただけのTummは持っているのか?それがよく分からないです。じぶん日本人ですし。
アルファベット文化圏の人にとっての名前は、ラベルに過ぎない、という度合いが、日本人より強いのではなかろうか?という疑問です。
なお、私の前回のレスで
「ロシア語は造語の自由度がわりと高い」
と書きましたけど、これはとくにそんな事はないですね。ちょっと間違えちゃいました。消せるなら消したい。今まで何となくこんなような気がしてたのだけど、こうして文字に書き出してみると勘違いだったことに気付く。文章にしてみる効果が作動しました。
さらに関係ない話になりますが;
コミック「ハルロック」をこちらのブログで知って、私も読んでみました。けっこう面白いです。単行本4巻で完結しちゃいましたね。
投稿: 牛込パン | 2015年8月31日 (月) 04時09分