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2016年2月 1日 (月)

「武士の娘」に悩む

昨年末にNHKの衛星放送で放映されていた「鍼子:武士の娘」を新年になってから見た。大変面白かった。きっと数年後にはNHKの朝ドラになるに違いない。

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「A Daughter of the SAMURAI」は1925年にアメリカで出版された、日本人による英語で書かれた自伝である。著者は杉本鍼子(えつこ)、旧姓を稲垣といい、父は長岡藩の家老であった。まさに正真正銘の「武士の娘」だったのだ。「The Daughter」ではなくて「A Daughter」なのは鍼子一人の話ではなくて武士の娘としての一般的な話であるという著者の意図によるものである。

父の(あ、いまはちょっと名前が出てこない)は戊辰戦争で人質となり、ほとんど処刑される寸前に明治政府による恩赦を受けて生き延びることができたのだったが、家老として戦争に反対していたこともあって、長岡藩の内部では苦しい立場にあったようだった。

鍼子の兄が渡米し(というのも時代を考えると驚くべきことだが)、アメリカで世話になった杉本氏に「妹を嫁にやる」と約束したものだから鍼子は5年をかけて渡米の準備をする。ミッション学校(現在の青山学院大学の前身)で英語を学び、船でアメリカへむかうのだ。

アメリカで杉本と結婚し二子を得るが、杉本が亡くなってしまうので、鍼子は娘二人と日本へ帰ってくる。しかし子供たちの教育の問題でやはりアメリカがいいということでアメリカへ戻りコロンビア大学で教鞭をとりつつ作家として原稿を書き、出版社に送るのだが、なかなか努力が実を結ばない。

そこで、「あなた自身のことを書きなさい」というアドバイスを得て書いたのが「A Daughter of The SAMURAI」であった。この本はアメリカでヒットとなり、ほかの7か国語に訳されて世界中で読まれたという。この本は今でもアメリカアマゾンで購入することができる。ダウンロード版はたしか2ドルとかそんな値段だったと思う(今見たら0.82ドルだった)。

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まぁこの話の裏には、ずっと彼女を支え続けたフォローレンス・ウィルソンという女性の存在があった、とか、鍼子が自らすすんでキリスト教の洗礼を受けたとかいう話もあるのだが、それよりも、話の端々に語られる武士の生活や武士の祖先から語り継がれた逸話などが実に興味深い。

さらにはそんな武家に生まれた日本女性がアメリカにわたって受けたカルチャーショックや、異国の文化であるということを頭ではわかっていても、なかなか受け入れることができない葛藤などが語られて興味深いのだった。

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というわけで、アメリカから再度帰国した鍼子に「武士の娘」を日本語に訳して出版するという話が持ちこまれ、鍼子は毎週その翻訳作業を監修することになる。

そうやってできた本を、1週間かかって読んだわけだが、ドンパチものとかスパイものばっかり読んでいた私にはやや退屈な話ではあった。

でも、ここに書かれている武士道みたいなものは、当時ほど強烈なものではなくても今の日本人にもうっすらと残っているように思う。そういう意識を再認識するということでも意味のある本だと思った。


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