人口動静に悩む
国勢調査によれば、日本の人口が減少に転じたという。
この結果を受けて、労働力の減少だとか経済に与える影響とかが論じられているようだけれども、これは結果なのであって原因ではないと思う。人口の減少というのは帰結なのだ。
よくわからないのは、国内で若い人が仕事を失ったり就職難だとか言っているのに、労働力が足りないから移民を増やせとか言っている人たちがいて、それはいったいなんなんだろう?人口が増えれば問題は解決するのか? 足りないのは労働力ではなくて実は購買力なんじゃないのか?
人口が減少するのはもちろん少子化のせいだが、なぜ少子化なのかというとそれは子育てがしにくくなっているからだ。
若い子持ちの夫婦はてたいてい共働きで、保育園探しに躍起となっている。父親の稼ぎだけでは生活できないから、母親まで働かないと生活が成り行かない。
どうしてそういうことになるのかというと、雇用が不足していてしかも不確実なのでいつ首を切られるかわからないから低賃金でも労働者は強気に出られない状況で、賃金は上がらない。賃金が上がらないのも購買力が上がらないものデフレのせいではない。
先日ちょっと書きかけて中途半端な書きっぱなしになっている「テクノロジーの進歩によって経済が停滞する」ということにつながるのだが、テクノロジーによって生産性が上がり、人類全体でを見渡すと仕事の絶対量は減っている。
人類存続のために絶対的に必要な衣食住について、生産性が上がるのはい事なのだろうが、上がった生産性によってそこへ富が集中する。
減った仕事の分だけ富は集中して貧富の差が広がるが、それを補償する意味でサービス業を始めとする「本当ならなくてもいい仕事」によって集中した富を分配する仕掛けが生まれてきたのだと思うのだが、その補償の仕組みがそろそろ限界を超えたのではないだろうか?
じゃぁどうりゃいいんだろうか? というと、富の再分配の仕組みをうまくやらないといけなくて、それを税収でやろうとすると共産主義みたいになってしまうし、そもそも資本主義というのは競争原理が原則だから、その原理に従って突っ走ってきたわけで、その結果として雇用の減少と購買力の低下を招いてしまったのだから、そこんところだけはうまく残してしかも仕事が増えるようにしないといけない。結局衣食住のような基幹産業じゃないところで新規な産業を育成しないといけないのかなぁ。ゲームとか?
「武士の娘」を読んでいて、その主人公である「鍼子」が長岡から東京の女学校へ行く時には人足数人で籠やら川の渡しやらをつかって1週間かかっていたのだが、10年後に米国から帰ってきて東京から長岡へは鉄道で半日にしかかからなかった。それは確かに進歩でありいいことではあるのだが、その10年前の人足たちはどうなったのだろうか?
やっぱり徐々に人口を減らして行くしかないんじゃないの?
3月2日追記:
2013年、MITのErik Brynjolfsson教授が似たようなことを言っている。
マサチューセッツ工科大学スローンマネジメントスクールのErik Brynjolfsson教授および彼の共同執筆者であるAndrew McAfee氏は、近年全世界で問題になりつつある就業率低下の背景に、産業ロボット工学から自動翻訳サービスまで幅広い分野において進歩し続けるコンピューター技術があると主張しています。次々と新しくなるテクノロジーを受け入れる産業は、製造・小売り・事務業だけにとどまらず、金融・法律に関する業種や医療・教育などのサービスにおいても最新技術を積極的に採用しています。 |
その根拠となっている資料がこれだ。二つの曲線は生産性の上昇(上側)と雇用(下側)を示している。詳しい根拠は元の論文を見ないとわからないが、2000年あたりからふたつの曲線が乖離していることを示している。

この論文に対しては異論もたくさんあったようで、定説とはならなかったようです。
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コメント
政策大学院大学にいらっしゃった松谷先生はうまく人口減らしてゆけば、という
趣旨の発言をされていらっしゃいました。
いずれせよ、人口は減るのですから、今までとは違った考え方を取らないと破綻する、ということでもありますが。
投稿: Cello | 2016年2月28日 (日) 14時03分
これですかね。
http://diamond.jp/articles/-/69539
続編
http://diamond.jp/articles/-/69750
要するに「労働力が減るからマズい」という現状追認のようですね。労働人口を支えるだけの仕事があることが前提のようです。
投稿: PicksClicks | 2016年2月28日 (日) 23時06分