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2016年6月19日 (日)

子供っぽい音楽に悩む

6月からBABYMETA(以下BMと略)Lはヨーロッパをライブツアー中で、ファンカム(観客が撮影したビデオ)がYoutuneに日々uploadされるので、早ければ1日遅れくらいでライブの様子を垣間見ることができる。ただ、私も根っからのヘビメタファンではないので30分も演奏を聞き続けるのはつらい。せいぜい10分程度のものをハシゴするわけだが、これが意外に時間を食う。

で、BMについていろいろと思うところがあるのだが、それらをうまくストーリーとしてまとめられなかったので、思いつくまま箇条書きにしてみようと思う。

1.メタルのビート
メタルはBPMでいうと400くらいのビートで演奏される。これは私が普通演奏する80~180と比べると考えられない速度なのだが、それがメタルという分野の魅力の一つになっているのかもしれない。

実を言うと私はまだまだ「メタルが好き」とは言えない状態ではあるのだが、この高速ビートについては徐々にその価値を認めつつある。私にとってはある意味新鮮なのだ。歪みだらけのギターやベースの音にはちょっとなじめそうにないのだけれども。

2.小気味よいダンス
BMの魅力の一つは、専門用語で「ユイモア」と呼ばれるYUIMETAL/MOAMETAL、つまり左右で踊っている二人のダンサーの踊りだ。これは見ているだけで楽しい。



その魅力の正体は何かというと、それはメタルのビートに対する深い理解とそのビートを表現するための訓練だと思う。

400BPMという高速ビートと、さらにその裏拍まで正確に体現することによって小気味の良いダンスを実現しているのだ。

BMのダンスは一見簡単そうに見えるが、細かいところまできっちりビートに乗せようとすると大変に難しい。国内外のたくさんのひとたちがYoutubeにダンスカバーを発表しているが、ちゃんとビートに乗れているのはインドネシアのグループくらいじゃないかな。

3.「Death」の無力化
「SU-METAL DEATH!」「YUIMETAL DEATH!」「MOAMETAL DEATH!」「3人合わせてBABYMETAL DEATH!」とかいうPerfumeゆずり(?)の自己紹介で、メタル系のおどろおどろしい呪いの言葉「DEATH」を笑顔で笑い飛ばして無力化してしまった。



YUIMETAL(左)はウインクが苦手らしくて、いつもタイミングが遅れる。

4.日本語の掛け声
BMはほとんどの曲を日本語で歌っているのだが、海外でも観客はその「合いの手」も日本語でで入れてくる。長髪髭面タトゥー付きのおっさんたちが日本語で唱和するのをみるのはなかなかの違和感だ。


ちなみにこの動画は6月初旬のスイスでのライブだ。

5.
アイドルファンとメタルファン
海外のメタルファンが掛け声をかけるのを見ていると、これは秋葉原あたりでアイドルヲタクたちがアイドルを応援している風景とすごくよく似ている。BMが引き起こしているのは結局のところ「アイドル文化の輸出」ということなのだろうか?

でも冷静にアイドルファンとメタルファンを比べてみると、何やら人生に不問を抱いている感じとか、ある意味刹那的な生き方をしているとか、体形が何となく似ているとかの共通点があるのではないかという気がしている。

6.
メタルファンは何処へ行く?
ロックはもともと不良の音楽だった。ロックがすっかり市民権を得てしまったころ、それに満足できない人たちがパンクとかハードロックとか、さらにヘビーメタルとかいう形で反抗の気概を音楽という形にしたのだと思う。

しかし、その一つの砦であるヘビーメタルの世界を、BMは破壊してしまった。BMによってヘビーメタルはもう反抗の、おどろおどろしい、悪魔の領域ではなくて「カワイイ・メタル」という市民権を得やすいものに(ある意味)なり下がってしまったのだ。

そういうBMを拒否する硬派のメタルファンも確かに存在するし、それはそれで正当な主張だと思う。

しかし一方で、マンネリに陥っていたメタルの世界に新風を吹き込んだという意味でのBMの功績がやはり大きいということは大方のメタルファンの認めるところのようだ。

7.
メタル魂?
そんなメタルファンの戸惑いを、日本在住のメタル・ギタリストであるマーティ・フリードマンがBMに直接ぶつけている。

これは先月だったかNHKの番組に出演したBMをフリードマンがインタビューしているの図だ。彼の戸惑いと葛藤をくみ取ってあげてほしい。

彼はBM結成時からずっと注目していたと言い、メタル素人がいつまで続くのか疑問に思っていたと言う。
Bm_vs_mf2

現在の状況を踏まえたうえで「君たちにメタル魂などはない!」と言い切る。もちろん、BMはそんなことニコニコと笑って受け流すのである。

Bm_vs_mf1

8.ライブステージで曲を作る
SU-METAL(中央のボーカル担当)がインタビューに答えて言っていたのだが、「ライブコンサートでお客さんと一緒に曲を作って言いくんですが、海外だとお客さんが私たちの曲を知らないので苦労したこともあった」と。

つまり、彼女はライブステージで客を乗せて一緒に参加してもらうことによって曲が完成すると考えているというのだ。

私にはそういう発想がなかったので、この発言は新鮮だった。これってプロデューサーに言わされているんだろうか?っていうか、そういうふうに教育されていたということなのかもしれない。

そういう「一緒に作った曲」が先に挙げたスイスの動画なんだろう。こんな「聴衆参加型音楽」というのも面白いものだなぁ、と思ったりするようになった。

でも、例えば「じゃぁSPAINのリフの部分を皆さんもご一緒に!」というのも難しいしなぁ。

9.セクシーでないこと
この項はもっと前の方でもよかったのだが、まぁ思いつくままってことで。

彼女たちが活動を開始したのが14歳(SU-METAL)とか12歳(ユイモア)なので、その時点でセクシーというのはいろいろと問題があることは容易に想像できるが、18歳と17歳という時点でもセクシーさを前面に押し出すことはしていない。これは賢明な戦略だと思う。

歌詞もどちらかというと子供っぽいし、ダンスもセクシーというよりもコミカルに近い。コミカルでありながら陳腐になるギリギリのところでとどまっているあたりが絶妙だ。

この戦略がいつまで通じるのかわからないが、私としてはBABYMETALがババァメタルになっても今の路線を踏襲してもらいたいものだと思う。

10.センター争いがない
アイドルグループではセンター争いというのがよく見られるわけだが、BMではSU-METALの歌唱力が頭抜けているのでユイモアとしては少なくともBMにいる限りソロボーカリストとして活動することはできない。MOAMETALはそれがちょっと不満そうだが、それでも歌唱力の差はその不満を抑え込むほど強いらしい。

というわけで、BMは子供路線、ノットセクシー路線を続けている限りは安泰だと思うのだが、3人が20代中盤に差し掛かったころに分岐点があるのではないだろうか。

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