CDを買うならもうアマゾンとかの通販か、あるいは演奏者から直接購入ということになってしまっていて、CDショップで買うということは本当に少なくなった。それでもたまに発見があったりするので、時間が余った時には覗くようにしているのだが、そもそも店内のJAZZのコーナー自体が小さくなってるしねぇ。
そんなある日、あるCD店のJAZZコーナーを呆然と眺めていると、人の気配がした。若い女性がJAZZの棚を眺めているのだが、マイルスのコーナーから(私には)見慣れた「Bitches Brew」のCDを引っ張り出して眺めている。
この写真はLPだけどね。
マイルス・デイビスの名前は知っているのだろうが、「Bitches Brew」は知らないらしい。むしろジャケットの図柄に興味があるようだ。
思い切って声をかけてみる。
「それ、聞いたことないんですか?」
「え?」
「マイルスはご存知なんですよね?」
「え?はぁ。はい。」
「マイルスに興味があって、このCDを聴いたことがないというのは、とてももったいない」
「はぁ。」
「私が1000円出しますから、ぜひこのCDを買ってください。」
「え?、いやそれは…」
「無条件です。あ、いや、このCDを買うのが条件です。」
「え~~?困りますぅ。」
「困ることないですよ。これ、いくらなのか知らないけどお得だと思いますよ。2枚組だし。」
「え、そうなんですか?」
・・・とまぁ、妄想も想像力に限界が来たのでこのくらいでやめておくが、一世を風靡したこのアルバムも、もう忘れ去られようとしているのだろうなぁ。ちなみにアマゾンで値段を調べてみると1500円くらいで売られていることもあるらしいから、1000円は出し過ぎかも。でも500円じゃけち臭いしなぁ。
実をいうと、マイルス・デイビスは嫌いだった。音を聞く前に「ジャズの帝王」というタイトルに拒否反応を示していたのだったと思う。
そんな「聴かず嫌い」を吹っ飛ばしたのがアルバム「Four and More」だった。

このアルバムはウェイン・ショーターが加入する黄金クインテットの一歩手前のメンバーで構成されていて、ショーターの代わりにジョージ・コールマンがテナーサックスで入っている。
私はわりとこのコールマンの演奏が好きなのだが、マイルスは気に入らなかったようで、即興性を至上課題とするマイルスに対してコールマンは事前にフレージングの練習をしているところをマイルスにとがめられて馘になった、という話を聞いている。
マイルスとコールマンを支えるリズムセクションは、ハービー・ハンコックのピアノ、ロン・カーターのベース、そして私を吹っ飛ばしたアンソニー・ウィリアムズのドラムだ。
しかし、周辺情報を集めてみると、このアルバムは別のアルバムを作った残りの音源で作られたものだという。のアルバムは要するにマイルスのカーネギーホール・ライブで、「My Funny Valentine」という。

もちろんこちらも同じメンバーで、このアルバムに入りきらなかった「Four」とかその他の曲を集めて作られたのが「'Four' and More」なわけだ。
これはさすがにいい出来のアルバムで、私の好きなアルバムのベストスリーに入る。余りものでできた「'Four' and More」に吹っ飛ばされるくらいの私だから、ご本家に文句なのあろうはずもない。
ひところはこれら2枚ばっかり聞いていた時代もあったなぁ、と思いつつも当時は今ほど情報があふれていたわけでもないので、「My Funny」にたどり着くのにも半年くらいはかかったんじゃなかったかな。
さらに何年かかかって、「Seven Steps To Heaven」にたどり着く。
まぁ、マイルスばっかり追いかけていたわけでもないのだけれども、時代的には「My Funny」の前ということで、メンバー的にはピアノがビクター・フェルドマン、ドラムがフランク・バトラーだったかな。
あ、ハンコックとアンソニーが入っている曲もあるんだった。
実はこのアルバムに収録されている「Basin Street Blues」を最近聞いたのがきっかけでこの投稿を書き始めた、という次第。
Biches Brewの値段を調べていたら、「Bitches Brew40周年記念CD4枚組BOX」というのを見つけてしまった。ボーナストラックがたっぷりなんだが、一度はボツになったってことだからなぁ。
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