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2017年12月25日 (月)

全翼機で悩む

子供のころは飛行機と言えばゼロ戦や隼、飛燕、鐘馗、震電なんかが好きだった。中学生ごろにはF104Jが好きだった。でも今なら迷わずこれだ。「Horten IXb 229」。

Hortenixb229
このHorten229は第二次世界大戦の終盤にドイツ軍がほぼ実用化していた全翼機だ。HortenというのはHorten兄弟というのが開発者だったということなのだが、会社名なのかどうかはよくわからない。この写真は実写ではないが、実機の写真や動画はネット上でいくらでも見ることができる。

この機体のことを知ったのは、20世紀の終わりごろにアメリカで買った「ドイツの軍用機」みたいなVHSビデオでだった。胴体も尾翼もない全翼機というのにも驚いたのだが、そのビデオで驚いたのはHortenIII(だったと思うのだが)という全翼型の試作機の脚だった。

私の記憶ではそのHortenIIIは前輪2本、後輪1本の3脚式だったのだが、なんとその1本の後輪が主脚だというのだ。だから離陸するときにはまず前輪が浮いて主脚の1本だけで胴体を支えつつ加速し、飛び上がる。着陸の場合にはまず主脚一本で着地して減速してから前輪が着地するというものだった。

この主脚が1本というのがなかなかショッキングで、さすがはドイツの合理主義!と感銘を受けたものだった。

この試作機がプロペラ駆動だったのか、それとも曳航されるグライダーだったのかさっぱり覚えていないのだが、Horten229みたいなジェットエンジンではなかったと思うんだけどなぁ。

そのVHSビデオをこの夏の大整理大会でどうも捨ててしまったらしくて確認ができない。どうせこんなのYoutubeにあるだろうと思ったが、いくら探してもHorten229しかなくて、一本主脚なんてのは見つからない。あれは私の幻覚だったのだろうか?

このHortenの技術は戦後アメリカがごっそり持って行き、ロッキードで試作を繰り返した後に最終的には「B2」として結実する。Horten229のころからすでにステルス塗料を使っていたりして、垂直尾翼がないことからレーダーに映りにくいということを意識していたらしい。

Deutcheboch4 それにしてもドイツの軍用機開発の多様さには驚かされる。ドイツに行ったときにいろいろこういう本を買ってきたのだが、こういう本が安くて10~30マルクということは600円~1800円くらいで買えてしまう。

写真左上のはアメリカのアマゾンで買ったのだが、これは35ドルくらいだった。

これらの本には実際には製作されなかった機体の設計図面などが合計で100機以上あるんじゃないかな。そういうのを見ているだけでも楽しい。

で、そういうのを見ていると自分でも作りたくなってくる。

紙でいろいろ作ってみた結果、A4のコピー用紙でこんなふうになった。





Paperplane1
A4用紙を単に折っただけではやはり重心位置がうまくいかないので、ゼムクリップで調整している。

Paperplane2
ゼムクリップなしで重心を取る方法も考え中。

12月28日追記:

クリップなしで重心位置とかいろいろ試行錯誤の結果こういうものができたんだけれども、どうしてもオモリに相当する部分の紙がうまくまとまらなくてホチキスで止めざるを得なかった。これはある意味反則だな。

ちなみに先のクリップを使ったものはA4フルサイズなので全幅298mm、全長210mmなのだが、今回のは全幅298mmは変わらないが、全長を120mmとした。飛び具合は部屋の中ではそれほど変わらない。

Noweight

で、一部訂正。Hortenの全翼機技術を戦後にアメリカが持ち帰ったと思っていたのだが、調べてみるとノースロップ社が全翼機を研究を始めたのが1941年だったということで、これはHortenの1930年代よりは遅いが、少なくとも戦後にHortenの技術をかっぱらったというのは間違いだった。

こちらの年表ではノースロップのほうが早かったということになっている。まぁ諸説あるんだろうな(11:20)。


12月30日追記:

ホチキスを使わずにオモリ部分をまとめることに何とか成功。使った紙は125mm×88mmのメモ用紙で、紙の厚さと大きさとの関係がちょうどいい感じ。

今回は何度でも同じように作れるように三角翼が直角二等辺三角形としたので全幅125mmに対して全長62mmとなった。


H229reg1_2 H229reg2
直角二等辺三角形の全翼機を飛ばしてみた。最初のがホッチキスを使っていないもの、二回目がオモリ部分をホッチキスで止めたもの。やはりホッチキスで止めた方が空気抵抗が少なくて具合がいいようだ。

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コメント

機体の先端と翼端の後縁を結んだ三角形を作り、その三角形の高さの上から1/3の所に重心が来るようにするとよく飛ぶんじゃなかったかな。

投稿: ををつか | 2017年12月25日 (月) 07時53分

重心を正しく調整しても安定して飛ぶわけではないんです。写真の紙ヒコーキの翼端へかけての折り返しが重要なんです。あれがないと滑空が安定しません。

単なる翼端捩り下げではないんですよ。

投稿: PicksClicks | 2017年12月25日 (月) 19時56分

わたしもホルテンの機体が飛んでいる所を見て見たいです。でもね、B-2でも機体の制御に色々苦労してるんだから、当時の技術では何処まで飛ばせたかな、細かい機動はラダーが無いと無理だと思うのですよね。戦後アメリカで実験的に作られた全翼機はどれも垂直尾翼が付けてる。飛行に胴体なんて邪魔、翼だけがあればよい、荷物や人は翼の中に入れれば良い、とユンカースが全翼機の実現に拘ったとかの話しも聞きますね。

投稿: ををつか | 2017年12月27日 (水) 08時57分

Hortenの実機が飛んでいる動画は7秒しかないですね。

後退翼にすることによって垂直安定板はいらなくなりますが、ラダーには苦労しているようで、左右エンジンの推力差で調整したり、ステルスを気にしなくてよい時には翼端のスポイラーを使ったりするとのことです。XB35にもそのプロトタイプにも垂直尾翼はありません。YB49にはちいさな垂直尾翼がありますね。

https://www.youtube.com/watch?v=2eZjIx_ViOA

しかし、全翼機に最初に搭乗したパイロットは怖かっただろうなぁ。勇気が要りますよね。「本当に大丈夫なのかな?ほんとに飛べるのか?」ってね。

投稿: PicksClicks | 2017年12月28日 (木) 23時32分

今時のジェットエンジンは推力の偏向が出来たりするので、ラダーの代わりになりますね、どちらにしろ、今時では静安定をほとんど無くしてフライバイワイヤで制御ですからね。ホルテンの頃のジェットエンジンではレスポンスが悪いですから、左右のエンジンのスロットリングでラダーの代わりはほとんど無理でしょうね、やはり左右の翼端にスポイラー付けての制御でしょうね。

投稿: ををつか | 2017年12月29日 (金) 22時37分

ラダーも問題だけれども、フラップはもっと難しいんじゃないかな。まったく不可能というわけでもないだろうけれども、フラップを出しつつ大迎角にするのが難しそうだ。

離着陸の時だけ前方に前翼を突き出してカナード形式にするとか考えないと実用は難しいかも。

投稿: PicksClicks | 2017年12月30日 (土) 10時25分

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