« 電灯消えて悩む | トップページ | ギターのミニチュアで悩む »

2021年7月28日 (水)

aikoの微分音に悩む

aikoはデビュー前後の頃に、「この子をデビューさせたいんですよ」というふうに番組で紹介されていたのを見て印象的だったのを覚えている。

その後有名になってきたころにはなんだか不思議な音程で浮遊感がある声だなぁと思っていた。特に調べることもしていなかったが、aikoというのは微分音をつかう人なのだろうという確信あるいは思い込みを持っていた。

今年のある日、Youtubeでaikoの「カブトムシ」を聞いていて、冒頭の部分でいきなり微分音だなぁ、と思いつつ同じ曲をほかの人がカバーしているのを聞いて「あ、全然aikoの音程を再現できてないじゃん」と思った。今回この投稿を書くにあたってその「カバー版」を探したのだがどれだか探せなかった。その時には明らかに音程が違っていることが分かったのだが、なんというか歳のせいで鈍感になったのだろうか?

ちょっと聞いてほしいのだが、これが参考にしたaikoの「カブトムシ」オフィシャルのMVもあるのだが音程を修正してあるかもしれないと思ってライブのを選んだ。ライブ動画はもう一つあるのだが、そちらのほうはご本人の調子が悪かったのか音程が悪くて参考にならないと判断した。

 

で、仮にカバーとして選んだのがこれなのだが、今聞いてもaikoと大きな違いが聞き分けられない。これじゃなかったと思うんだが、このカバーはカラオケの点数をつけるために音程を判定しているので違いが出るのではないかと思って選んだ。

 

で、ここで重大発表です。私はaikoの微分音についてちょっとした仮説を持っているんです。それはまずaikoの微分音の正体は「Blue Note」であり、そのBlue Noteというものが実は「平均律7音音階」というものではないか、と考えているのです。

我々が普通つかっている音階は「平均律12音音階」とでも言うべきもので、1オクターブ(周波数にして2倍)を12等分(2の1/12乗ずつの等比級数)し、それを全音半音の組み合わせによってドレミファソラシの7音階にしている。この12音階から7音階にする過程については別項で書いた

7音音階についてはまたあとで詳しく解説するとして、「カブトムシ」に戻ろう。

「カブトムシ」を譜面通りに(つまり12音音階上の7音音階で)演奏するとこうなる。テンポがちょっと遅いがごめん。

これを7音音階で演奏するとこうなる。違いが分かるかなぁ? このバリエーションは当初、微分音の疑いが濃いEbの音だけを平均律7音音階にすり替えるつもりだったが、思い切って全部の音を平均律7音音階にしている。

同じに聞こえる? 同じファイルじゃないかと疑ったりしてる? 実は私も疑った。なので二つのファイルを同時に鳴らしてみた。そしたら周波数差によってビート(うなり)が発生している。ふたつのWAVファイルをステレオの左右にできればよかったのだが、私の環境ではできなかった。

似たような微分音は山崎まさよしの「セロリ」の冒頭でも言えるとは思うのだが、はっきり言うとカブトムシで力尽きたって感じ。

 

では曲を離れて、平均律7音音階について語ってみよう。

まず、これが平均律7音音階の音です。単音8つのあと、"ダイアトニック"の三音和音を8回鳴らしている。

Scaleruler7

普通の音階と平均律7音音階の関係は左の図のようになる。7音音階と5音音階の刻みをEXCELでキレイに付けたかったのだが、インクと紙と時間を散々無駄にした挙句うまくいかなかったので手書きにした。例えば「2/7」は平均律7音音階の(ゼロから数えて)2番目の音であることを示している。

この鍵盤の図にはちょっと仕掛けがあって、12音音階を均等に配置できるようになっている。右側のマスキングテープを貼ってある部分は上下にスライドして12音音階に対して相対的な音階を表示できるようになっている。この場合は根音がCなのでスライドはさせていない。この仕掛けはもともと別の用途に使うつもりで作ったものだ。それについてはまた別の機会があるだろう。

この7音音階と普通のハ長調の音階とを比べると、2/7、3/7、6/7がそれぞれ3度、5度、7度の音に対応するBlue Noteになっている、というのが私の指摘だ。普通の音階と平均律7音音階を組み合わせてブルージーなフレーズを作るということもやってみようとは思っているのだが、まだ手を付けられないでいる。

この7音音階がそれ自体で音楽を支える音階として成立しないのは、近似的に整数比となる和声を構成できないからだ。さらに言うと、音階には周波数比で1.5倍(普通の音階で5度の音程)というのが重要なのだが、7音音階では主音に対してほぼ1.5倍の音はあるのだが、その音のさらに1.5倍が7音音階上にない(普通の音階ならドに対して1.5倍でソ、ソの1.5倍でレ)ということがある。12音階が使われるのは偶然ではないのである。

普通の音階も比較のために置いみよう。

そういえば、平均律5音音階というのも、ペンタトニックなんてものがあるなどいろいろ検討はしているので、それも置いてみようか。いらない?

しかし、伴奏付きの歌はどうにも周波数を測定できなくてもどかしい。たまたまギターで微分音を出している例があったのでそれを紹介する。

これはtakiさんから紹介された「美人ギタリストシリーズ」の一環で、バーデン・パウェルの「宇宙飛行士」をアシュレイ・ルセロという人が弾いている。最初にアルペジオでA、F#、C#、E、Bと弾いているのだが、最後のBの音に違和感を感じる。

 

Bの音は本来ならば494Hzのはずなのだが、測定してみると507Hzあたりになっている。これは2%の誤差だが周波数は半音で6%違うので、2%の誤差は無視できない。おそらく演奏誤差ではなくて意図的な演奏行為だと思うので、その点を動画のコメント欄で質問してみたが全く返答がない。まぁ演奏者個人のチャネルではないので仕方がないのかな。

505hzb

ちなみに507HzというのはBass音のAを基準とすると平均律5音音階の1/5である。これもなにかのご縁かも。

 

|

« 電灯消えて悩む | トップページ | ギターのミニチュアで悩む »

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 電灯消えて悩む | トップページ | ギターのミニチュアで悩む »