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2022年9月26日 (月)

電磁カタパルトで悩む

2022年6月に中国3隻目の空母「福建」が進水した。まだ海面に浮く事ができるだけで内装とか兵装はこれからなのだろうが、電磁カタパルトを実装する計画だということが注目されている。

Carrierfukken

進水直後の写真では3基のカタパルトは厳重に秘匿されており、内容を伺うことはできない。世界の意見では「本当に作れるの?」「作っても運用できるの?」というものが大勢を占める。米軍でさえ作るのに苦労して運用するにもトラブルに悩まされていて、元大統領のトランプをして「もう電磁カタパルトは使わない。」と言わしめたとか。

電磁カタパルトがなぜそんなに問題になるのかというと、使用する電力量がとんでもないからだ。だから潤沢に電力を使うことができる原子力空母でないと運用できないという声もあり、その点で中国の「福建」が通常機関であることから運用できないとみられているのだ。

では実際にどれほどの電力量が必要なのか計算してみよう。空母から発艦する最も重い航空機は早期哨戒機で、この重量が35tだという。この35tを全長250mのカタパルトから256km/hで打ち出すには、102.4KWhのエネルギーが必要で、射出するのに必要な時間は7秒である。ちなみにその時機体にかかる加速度は10.1m/sec2だから約1Gだ。

102.4KWhというのはテスラのモデルSや日産リーフの電池容量の約二倍だ。電気自動車二台分の電力を7秒で使い切らないと早期警戒機は飛ばせない。52.7MWを7秒間通電するとこのエネルギーになるが、これまた想像できない量だ。

学生時代には阪急電車をよく利用していたのだが、阪急電車には乗客から見えるところに電圧計と電流計が表示されていた。1500V・500A投表示を見て「ひぇ~、3Ωかよ!?」とか思ったりしていのだが、これでも0.75MWだから、52.7MWというのは阪急電鉄の動力車70台分の電力を供給することになる。そりゃ大変だわ。

ならば早期警戒機はあきらめて、18tくらいの軽い戦闘機を220km/hで射出するとしたらどうか? すると38.9KWhでいいことになる。約1/3になるのは機体が軽くなったことよりも射出速度を押さえた効果が大きい。

というわけなので、空母「福建」が早期警戒機を飛ばせるのか、それとも戦闘機しか飛ばせないのか、というのが注目のしどころかな?と。

ちなみに、より一般的な蒸気カタパルトというのも技術的に難しくて、単純に考えると蒸気圧で飛行機を250mに渡って加速するにはそれだけの長さのシリンダと、それだけの長さのピストンロッドが必要なわけで、もちろんそんなことはできないからピストンが通過したとこらからシリンダを閉じていくような仕掛けが必要で、これはジップロックの閉じ口のような仕掛けで実現させているらしいのだが、30気圧の蒸気圧をよくもまぁそんなふうに扱えるものだなぁと思う。

参考URL

2024/10/22追記:

なんでも川崎重工が電磁カタパルトに使えるニッケル水素電池を開発したとか。ニッケル水素電池だと発火の心配がないので大容量の電池を商品化可能で、川崎重工はすでにニッケル水素電池を定置型蓄電器として商品化しているのだとか。

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