電磁カタパルトで悩む
2022年6月に中国3隻目の空母「福建」が進水した。まだ海面に浮く事ができるだけで内装とか兵装はこれからなのだろうが、電磁カタパルトを実装する計画だということが注目されている。
進水直後の写真では3基のカタパルトは厳重に秘匿されており、内容を伺うことはできない。世界の意見では「本当に作れるの?」「作っても運用できるの?」というものが大勢を占める。米軍でさえ作るのに苦労して運用するにもトラブルに悩まされていて、元大統領のトランプをして「もう電磁カタパルトは使わない。」と言わしめたとか。
電磁カタパルトがなぜそんなに問題になるのかというと、使用する電力量がとんでもないからだ。だから潤沢に電力を使うことができる原子力空母でないと運用できないという声もあり、その点で中国の「福建」が通常機関であることから運用できないとみられているのだ。
では実際にどれほどの電力量が必要なのか計算してみよう。空母から発艦する最も重い航空機は早期哨戒機で、この重量が35tだという。この35tを全長250mのカタパルトから256km/hで打ち出すには、102.4KWhのエネルギーが必要で、射出するのに必要な時間は7秒である。ちなみにその時機体にかかる加速度は10.1m/sec2だから約1Gだ。
102.4KWhというのはテスラのモデルSや日産リーフの電池容量の約二倍だ。電気自動車二台分の電力を7秒で使い切らないと早期警戒機は飛ばせない。52.7MWを7秒間通電するとこのエネルギーになるが、これまた想像できない量だ。
学生時代には阪急電車をよく利用していたのだが、阪急電車には乗客から見えるところに電圧計と電流計が表示されていた。1500V・500A投表示を見て「ひぇ~、3Ωかよ!?」とか思ったりしていのだが、これでも0.75MWだから、52.7MWというのは阪急電鉄の動力車70台分の電力を供給することになる。そりゃ大変だわ。
ならば早期警戒機はあきらめて、18tくらいの軽い戦闘機を220km/hで射出するとしたらどうか? すると38.9KWhでいいことになる。約1/3になるのは機体が軽くなったことよりも射出速度を押さえた効果が大きい。
というわけなので、空母「福建」が早期警戒機を飛ばせるのか、それとも戦闘機しか飛ばせないのか、というのが注目のしどころかな?と。
ちなみに、より一般的な蒸気カタパルトというのも技術的に難しくて、単純に考えると蒸気圧で飛行機を250mに渡って加速するにはそれだけの長さのシリンダと、それだけの長さのピストンロッドが必要なわけで、もちろんそんなことはできないからピストンが通過したとこらからシリンダを閉じていくような仕掛けが必要で、これはジップロックの閉じ口のような仕掛けで実現させているらしいのだが、30気圧の蒸気圧をよくもまぁそんなふうに扱えるものだなぁと思う。
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コメント
空母のカタパルトはとても大変な機械の様ですね。
中国の空母の進水式時にカタパルトの所に建屋を作りカバーしてるのは秘密保持とかも有るでしょうけど、カタパルト設置作業自体が室内でやる必要のある微妙な作業だと聞いた事があります、アメリカもカタパルトの修理などの作業時にはテントを張っていますね。
投稿: ををつか | 2022年9月28日 (水) 20時17分
中国人民軍はまだ電磁でやるか蒸気でやるか迷ってるんじゃないですかね? 進水したというニュース以来続報がないので状況がわかりませんが、どちらも簡単じゃないので困っているのかも。
でも、「電磁カタパルトのために3基のディーゼルエンジンを搭載している」という話も聞こえてくるので、電磁式にはしたいんだろうなぁ。
投稿: PicksClicks | 2022年10月 2日 (日) 13時14分
中国の空母、動力が蒸気タービンとかで無いと、蒸気カタパルトは難しいですね。
自衛隊が開発中のレールガンみたいに、巨大なコンデンサーが並ぶんじゃないですかね。
米空母の場合、原子力(その前は蒸気タービン)で潤沢に蒸気が使えたのが蒸気式カタパルトを採用した理由の一つのですからね。
投稿: ををつか | 2022年10月 5日 (水) 20時36分
蒸気カタパルトに使う蒸気の蒸気圧は30~70気圧なんだそうです(出典:兵器メカニズム図鑑)。ピストン断面積をざっくり0.2m2として、50mのカタパルト長で最大どれほどのエネルギーを出せるんでしょうね?
蒸気を作るには水は必要ですが、ボイラーには海水を入れるのかなぁ? 乗組員には真水と塩が必要なので、きっとそのためのボイラーもあるはずで、蒸気カタパルトだったら兼用してもいいよね?とか。
投稿: PicksClicks | 2022年10月 7日 (金) 08時16分