ベテラン漫画家に悩む
どうも最近ウチのテレビが面白くない。買い替え時かな?(ちがう)
しかし、昨夜例によってザッピングしていたら興味深い番組を見つけた。ひとつはテレ東で浦沢直樹の個展をメインテーマとして彼の作業を丹念に捉えたもの(番組:「クロスロード」)、もうひとつはNHKでやはり浦沢が出演しているのだが、さいとうたかお(ほら、あのゴルゴ13の)と対談しているというもの。後者は伝説になるような番組で、漫画に興味があって見逃した人、特に漫画家を目指している人はNHKオンデマンドにでも駆け込んで有料でもいいから見るべきだ。
前者は世田谷文学館で今年の1月15日(一般公開は16日から)~3月31日まで開かれている浦沢の個展(つまり、今日も開催中なのだ)へ向けて浦沢の業績や実際の作業などを紹介しているものだった。
浦沢の作品はYAWARA!から見ていて、モンスターがちょっと重く、20世紀少年は映画もちゃんと劇場で見たけれどもあまり好きになれず、ということでファンというにはちょっと距離を置きすぎなのだが、絵は好きだ。
番組では普段から不断に絵のことを考えていて、例えば電車で前に座って居眠りしている老人の影の様子を観察していたりしていて、その様子をさらさらとカメラの前で再現して見せたりする。
この人に限らないかもしれないが、すらすらと絵を描き上げる様子というのはそれ自体がアート・パフォーマンスだと思う。そういう意味でもこの番組はたいへん楽しむことができた。
この番組の中では何度も浦沢自身の顔が映されるわけだが、浦沢自身の顔がなんだか浦沢の描くキャラクタに似てきているように見えた。実際には逆なんだろうけれども、なんだろうな、私がそれだけ浦沢の描き出すキャラクターに引き込まれているということなのかもしれない。
個展へ向けての動きも面白かったのだが、それは個展の情報(リンクは開催中のみ有効)をみていただくとして、とにかく面白い番組だった。録画しなかったのが惜しまれるが、まぁ録画してどうなるというものでもないし。
番組の終盤で、浦沢が番組ナビゲータの原田泰造を描くということになって、ただし心象風景として「成功したのだが、それを顔に出したくないのだけれどもうれしさが顔ににじみ出てしまう」ということを描き込んでくれ、と。「無茶ぶりだなぁ、むつかしいなぁ」とかいいつつさらさらと描いてしまったのだが、録画もしていないので当然ここにお見せできないのが残念。時間がたてば「原田泰造 浦沢直樹 成功」あたりで検索すると見つかるかもしれない。「漫勉」ではさいとうたかおの作業風景を定点カメラで撮影し、おそらくは番組スタッフが編集したものを見ながら二人が対談するという形式だった。
浦沢はゴルゴ13の単行本巻末に短編を描いていたのがデビューだったそうで、さいとうは「え?そうだったの?名前見てなかったなぁ」いう反応。
さいとうたかおは現在78歳で、今でもゴルゴ本人だけは彼が描いているし、そもそもカット割り、ネーム、コンテと最終チェックを丹念にこなしている。
ゴルゴを描くのもなかなかの衝撃的なもので、顔のだいたいの大きさを楕円と十字でさらっと描くと、いきなり太めのサインペンみたいなもの(さいとうはminiペンと言っていた。乾燥が速いんだそうだ。)で眉毛を描き始める。
浦沢も「私も眉毛から描きます」と言っていたが、その後もなんの下書きもなく各種の太さのminiペンを使って描き上げる。ちなみに漫画家がよく使うGペンというのはさいとうたかおが使い始めたのだそうだ。
下書きなしで描くのも衝撃だったが、浦沢が「これは衝撃映像ですよ」と言っていたのがホワイト(修正液)をタバコの火を近づけて乾かすシーンで、「焦げないんですか?」「昔は焦がしたこともあったよ」などの会話が。
まぁほかにも面白い話がたくさんあったのだが、今二人に共通するのが「漫画は映画を安く作る方法である」と考えているということ。さいとうたかおがカット割りと絵コンテを描き、最終チェックで擬音を書き加えたり、「汗」っぽいものを描き加えるのも監督としての所作なんだろう。
「漫勉」は3月3日からシーズン2が始まるらしい。シーズン1の再放送がないか、DVDが出ていないか、チェックしてみよう。
そしてこれから出かけるのだが、環八で世田谷文学館の近くを通るんだなぁ。ちょっと寄りたいけど無理だな。
2017年9月18日追記:
原田泰造 by 浦沢
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