カテゴリー「書籍・雑誌」の83件の記事

2022年5月15日 (日)

釘になったウサギに悩む

 ウィリアム・スタイグはジェレミー・スタイグの父親である。ジェレミー・スタイグはジャズ・フルーティストであり、画家でもある。超有名というほどではないが、一部に熱烈なファンが存在する。ジェレミーは日本人女性と結婚して2009年から日本に住んでいたが、2016年に日本で亡くなった。
 ジェレミー・スタイグが2009年に来日した時、茅ケ崎で彼の絵の個展を開くということを聞きつけて、私は茅ケ崎まで出向いて、ジェレミー本人と小一時間ほどお話しすることができた。その時にお父さんが漫画家だということを知っていたので「お父さんはどんな漫画を描いてたんですか?」と聞いてみたら「そうだなぁシュレックとか」「え~!?有名なやつじゃないですかぁ」というふうなことがあった。
 で、横浜市立図書館の蔵書検索ということができるようになったので、ついつい「スタイグ」とか検索してみたら「ウイリアム・スタイグ」の絵本が引っかかってきたというわけなのだ。
 「くぎになったソロモン」という話で、ウサギのソロモン君はある日自分の鼻をこすると自分自身が釘になってしまうことを発見する。しかし、釘に変身する瞬間を猫の一家に見られてしまい、釘になったまま捕らわれの身となって檻に入れられてしまう。猫の一家は釘がウサギに変わったら食ってしまおうと待ち構えているのでソロモン君は釘のままじっとしている。
 しびれを切らした猫一家は釘を家の外壁に打ち付けてしまう(猫一家は木造の一軒家に住んでいる)ので、ソロモン君はウサギに戻れなくなってしまう。さて、どうなる? というお話だ。ジェレミースタイグのお父さんがこういうお話を作ったのかと思うとなかなか感慨深いものがある。

William_steig_solomon_nail

では、そのジェレミー・スタイグってどんな演奏するの? とお思いの向きもございましょうから、彼を一躍有名にしたアルバム「What's New」から「Time Out For Chris」をどうぞ。ピアノ:ビル・エヴァンス、ベース:エディ・ゴメス、ドラム:マーティ・モレル。

 

アルバム「What's New」はジャズのアルバムの中でベスト10に入るのはちょっと難しいかもしれない。が、ベスト50にはきっとはいるとおもうなぁ。私の持っているアルバムの中では間違いなくベスト5に入るのだが。

 そうだ、ジェレミーがどんな絵を描いているかというのもここに置いておこう。
Steiggomez
なにかお父さんの絵に通じるものを感じ取れるかな?

 

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2022年5月 3日 (火)

図書館の本を借りて悩む

横浜市立図書館の話を書いたのはこのBLOGだったかそれともFacebookの方だったか、もう忘れてしまったのでまぁとりあえず書いてみて、Facebookにしか書いてないのだったら転載しよう(電子図書館の話しか書いていなかった)。

9books

この4月から最大10冊まで借りられることになったのだったかな。今9冊借りているので、その詳細をだらだら書いてみよう。

この投稿は本来スマホから投稿するはずだったのだったが(写真に名前も付けずにそのまま投稿できるので)、スマホからのLOGINが「ただいま混雑中につき」はじかれてしまったので、しかたなくPCから書いている。写真は後でまたスマホからの投稿にトライする(ダメだった)。

・「不吉なことは何も」
 フレドリック・ブラウンの書いたものは高校性の頃にほとんど読みつくしたと思っていたので、図書館の検索でこの本が現れたときには驚いた。こんなタイトルには覚えがない。でも読み始めてみると、この本は「復讐の女神」の新訳版であることがあとがきに書いてあった。そのタイトルなら憶えている。でも読み始めても内容は全然覚えていないので、もう一度楽しめるというわけだ。
   ⇒短編はフレドリック・ブラウンとしては凡庸だった。しかし、最後に収録されていた中編(100ページほど)の「踊るサンドゥイッチ」はとても面白かった。こんな面白い話を忘れてしまうとは情けない。これはどうして映画化されないんだろう? ブラウンの作品では「真っ白な嘘」が映画化されたことを覚えている。これは日本でもTVドラマになったはずだ。「踊る・・・」は「真っ白・・・」よりも絶対に面白いのになぁ。

・エッシャーマジック
 「だまし絵の世界を数理で読み解く」ということでエッシャーの作品を数学的に考証しようという本。これは面白そうなので別途入手して、借りたものは読まずに返却する予定。入手手配済み。⇒入手済み。

・「矜持」ディック・フランシス
 ディック・フランシスが大好きだということはこのBLOGの最初の頃に書いている。この人の作品もほとんど読みつくしていると思っていたが、図書館で検索すると読んでいないのが3冊あったので順次借りて読んでいる。一冊(「拮抗」)はもう読み切って返却した。「矜持」には外へ持ちだした時にも読めるように手製のカバーをかけている。このカバーはこのサイズの本なら大抵使えるので、今後も重宝しそう。
    ⇒「拮抗」も「矜持」も面白かった。「祝宴」はまだこれから。

・「祝宴」ディック・フランシス

 これもディック・フランシスだ。ただし、今回図書館で借りたフランシス物はすべて息子のフィリップ・フランシスとの共作になっている。ムスカは物理学者ということだが、どういうふうに共作したのかはわからない。そういえば訳者も菊池光から北野寿美枝に代わっているのだった。訳に違和感があるかな?と思ったがそうでもないようだ。

・エレクトリック・ステイト
 シモン・ストレインバーグ著 山形浩生訳。まだパラパラと見ただけなんだけど、映画用の絵コンテを写真で表現して説明書きがあるような感じで、絵本みたいに読めるのかな? 面白かったら別途紹介する。

・THE MIRACLE OF M.C.ESCHER
 「エッシャーの奇跡」というわけだが、内容はありがちな作品集。例の横に長い「メタモルフォーゼ」も折りたたんだ形で完全収録されている。

・図説狙撃手百科
 検索するとこういうのが引っかかってくるのが図書館のすごいところだ。こういう本はなかなか書店では見つからないし、アマゾンで見つけても中を見る事がかなわない。内容的には図より文章が多くて、例えばフィンランド軍の「白い死神」としてロシア軍に怖れられたシモ・ヘイヘについて5ページにわたって記述している。ロシアが1939年に「フィンランドがロシア領を砲撃した」との虚報をでっちあげてフィンランドへ侵攻したことによって始まる「冬戦争」は、ちょうどいまロシアがウクライナでやっているように計画性のない侵攻だったらしく・・・というふうな話が列挙されている(まだヘイヘのところしか読んでない)。

・航空機透視図百科図鑑
 この本は現在手に入る様々なカタログやマニュアル、保守説明書などから透視図を作成して作られた本だ。詳しい内容についてはまた紹介する機会があるだろう。

・軍用機大図鑑
 先に紹介した透視図百科とは違って、この本では時系列に従って一定のフォーマットで軍用機の詳細を図示している。有名な機体だけでなく、ロシアやイタリアなどのマイナーな機種についても詳しく説明されているのはオタクにとってうれしい限りである。読んでいると時間を忘れる。




 

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2022年4月12日 (火)

海の向こうの戦争で悩む

 ひところ村上龍の作品をいくつか続けて読んでいたことがあった。透明ブルーとかコインロッカー・ベイビーズとか。その時にこの本もタイトルだけは知っていたのだが、どういうわけだかその時は読まなかった。「海の向こうで戦争が始まる」というのはすごく突き刺さるタイトルで、そのあとも何度も思い出したりしていたのだが、その後味悪さというか「対岸の火事を面白がっている自分」というのが何となく嫌だったのではないかと今では思う。

War_beyond_sea

 ロシアがウクライナに非道な侵攻をしている今こそがこの本を読むときではないだろうか。早速オンラインで図書館の手続きをして読んでみた。

 はっきり言うよ。面白くなかった。私には難しすぎたのかもしれないが、読者に無断で場面転換が何度もあって面食らうし(「一方、」「そのころ、XXでは」などをあえて徹底的に削除したんじゃないか、と思うくらいだ)、漢字の間違いはいろいろあるし、だいたい文章が下手だ。なんでそんなに面白くないのかといぶかっていたが、あとがきを読んで納得した。以下に引用する。

あとがき

 この作品を書き上げた夜、あるバーでリチャード・ブローディガンに会った。「二つ目の小説になる本を書いたよ」そういうと、ブローディガンは「ふぅん」と横を向いた。この野郎、おめでとうくらい言ったらどうだ、と思ったが、彼はその時機嫌が悪かったらしい。もう一度僕に向きなおるなり、「大事なのはね、三作目だ」と短く言った。

 「処女作なんて体験で書けるだろ? 二作目は一作目で習得した技術と想像力で書ける。体験と想像力を使い果たしたところから作家の戦いは始まるんだから」

 脱稿の酔いが、あっと言う間に醒めてしまった。そのバーからの帰り、昔の友達のことを思い出した。「俺が生きている時は注射針が腕に刺さっている時だけだ。残りは全く死んでいる。残りは注射器の中に入れる白い粉を得るために使うんだ」歩きながら、小説は麻薬にそっくりだと思った。

 つまりこの作品は第二作だったのだな。第一作の「透明ブルー」も実は私にはあんまりおもしろくはなかったんじゃなかったかな?この「海の向こう」を読んでいて何となく既視感があったのは、「透明ブルー」を思い出したのかもしれない。でもこのタイトルはかなり刺さった。刺さったけれどもそのタイトルが小説の中でうまく展開できていないのが残念だ。

 読み終わった後で、「腰巻」が表紙裏に添付されているのに気が付いた。これを先に呼んでいたら印象が変わったかもしれないが、しかしとんがっとるなぁ。

読者へのメッセージ

風呂場のタイルに貼り付いている女の髪の毛、それが青い地球の末梢神経だ。戦争はすでに始まっている。我々の頭の中にビジョンとしてではなく、宮殿として空に浮いているのでもない。戦争は海の向こうで、また我々の目の裏側で確実に始まっているのだ。それは近代戦争しか体験のない我々の親たちの想像力を超えている。僕は戦争を見た。意味を考えるのは見た後でいい。僕の見た戦争をあなた方に語りたかった。

著者

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2021年9月 5日 (日)

電子図書館で悩む

横浜市立図書館の電子版というのは今年の3月から始まったものらしい。正式には「横浜市立図書館 電子書籍サービス」。デジタルコンテンツだからいろいろと難しいこともあるのだろうが、気になる著者名で検索してみるとこんな結果になった(図は加工しています)。

Yokohana_lib

「該当資料なし」を意図的に集めたのでちょっとダメダメを強調しすぎではある。例えば川端康成なら2件(ただし川端の著書でないものがヒットする)、夏目漱石なら26件、二葉亭四迷なら4件、筒井康隆なら2件などなどがヒットする。

まぁ、売れ筋の書籍が電子的に読めてしまうということを公的にサポートすると、ビジネスが成り立たないじゃないか、ということもあるんだろうなぁ。「貸し出しは同時に2件、2週間」という制限もそういうことを考慮してのことなのだろう。でも、もうちょっと頑張っていただきたいなぁ。

逆に、というか、「ダイエット」、「漢方」、「自宅筋トレ」あたりならちょこちょこヒットするので、そういう庶民的な話題の書籍についてはいろいろと取り揃えてありそうだ。

そんなふうにツッコミを入れつつ、スマホからもアクセスできるので面白いといえば面白い。ただ、貸し出し予約してから実際に貸し出されるまでに時間かかりすぎ。

一方、日本には国立国会図書館というすごいところもあって、以前は入館証をもらっていたりしたのだが、ここのところすっかりご無沙汰している。外部からも書籍一覧にアクセスできるようになったとかならなかったとか、電子化はどうなっているのか調べてみると、こんなページからいろいろとアクセスできるようだ。特に会員登録も必要ないようだし、これでいろいろ読めるといいのだが、なかなかコンテンツまでたどり着けない。

「歴史的音源」なんていうのもあって、昔のSPレコードから収録したものとか、昔の落語とか漫才とかにもアクセスできるようだ。

2022年5月3日追記:

 「電子図書館」という言葉に引っかかったので、その件を主に書いているのだが、その前にまず横浜市立図書館を利用するための利用者登録をしなくてはいけない。で、そうすると図書館カードというプラスチックカードをいただけて、その会員番号で電子図書館にLOGINできるのだが、このカードでもちろん本物の図書館にも入館できる。

 でも。図書館へいちいち行くのはめんどくさいよね、ということでほうっていたのだが、家人がこのカードでじゃんじゃん本を借りて読みまくっている。それどうやってるの?と聞いてみると、駅前の小さな事務所(行政サービスセンター)まで本を転送してくれるサービスがあるという。私が図書館へログインして借りる手続きをしてもそういう選択肢は表示されない。家人に聞くと「なんかいろいろやっているうちにできるようになった」とのこと。

 らちが明かないので、図書館に電話して聞いてみると、つまりメールアドレスを登録しないと出張所っていうかそういうところへの転送ができるようにならないらしい。そういえば住所と電話番号しか登録していなかったかな。

 というわけで、検索して予約し、出張所へ転送してもらって本を受け取る事ができるようになった。これは便利だわ。こんな本を借りたりしています。

 

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2018年11月25日 (日)

世田谷文学館で悩む

Tsutsui_ten 書くのを忘れていたのだが、世田谷文学館で開かれていた「筒井康隆展」に行ってきたのだった。

筒井康隆というと、高校生ぐらいのころにはほぼファンだったのだが、純文学方面に色気を出し始めたころからなんだか嫌になって読まなくなってしまっていた。

一番好きだったのは「馬は土曜に蒼ざめる」の「夜を走る」だったかなぁ。単行本の「俺の血は他人の血」とか「男たちの描いた絵」とか「俗物図鑑」も好きだった。

でも、今回の「筒井康隆展」で発見したのは「全体を見渡した時には、私はそれほど筒井が好きではない」ということだった。

まぁこれに関してはだらだらと書くこともできなくはないのだが、やめておこう。

それよりも、展示されていた「筒井康隆作品マップ」というのが面白かったのでこっそり掲載。筒井の全作品(だと思う)を分類したものだ(クリックすると拡大されます)。いったい誰が分類したんだろう? 本人?

Tsutsui_works

展示場の片隅には「筒井康隆書房」なんてのがあって、これは何かというと筒井康隆が読んだ本を販売します、とのこと。でも土曜日限定だとか、値段はその時に付けるとかなんだか不明瞭だったので、私には全く買う気が起こらなかった。

Tsutsui_shobou

でも一つ気になったのがあって、それは私も大好きだった「フレドリック・ブラウン」の本がその中にあったこと。「筒井康隆蔵書」とかいう印が押印してある。

Tsutsui_brown

で、まぁ昔ファンだったよしみということで、図版本を買ってきた。

Tsutsui_zuhan

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2018年7月10日 (火)

女性作家のミステリで悩む

Girlsevenデイル・ブラウンの軍事小説に疲れたので、箸休めのつもりで女性が主人公の柔らかめのサスペンスを選んだつもりだったのだが。

その主人公が日英ハーフの21歳で、「たかがセックスでしょ」とか言い放つような危ないキャラクタで、実際にほんとにヤバい奴なんだなぁ。

なかなか共感できないところも多くて、あ、それ忘れるんだろうなぁと思ったらやっぱり忘れたりとか(見え見えの伏線)、ラストシーンも納得いくものではなかったり。

だいたい、日英ハーフの女性の気持ちを外国人女性がどれくらい把握できるものなんだろうか? 六本木のエピソードとか、豊島区の雰囲気とかいろいろ勉強したんだなぁとは思うんだけれども。

で、ひょっとしてjazmys先輩(海外ミステリを原語で1000冊以上読破中)がこのあたり読んでおられたりするのかなぁ、とチェックしてみると、さすがにこの作品のひとつ前の作品「Something You Are」をチェック済みだった。そのチェックの中で、主人公がニック・カルアナとあって、あ、それって「ガール・セブン」でも重要な脇役になってる奴じゃん。

で、その「Something You Are」がこの作者「ハンナ・ジェイムソン」の処女作なのだが、なんとこの作家が処女作を書いたのが17歳の時で、21歳までに3作品を書き上げていたというから、この「ガール・セブン」もそのころに書いたらしい。ひぇ~。

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2018年7月 9日 (月)

元軍人の小説で悩む

Korea_attack_north半島あたりの雲行きが怪しくなったころに買ったものを今頃読んでいる。

まぁ、当面はキツネとタヌキの化かしあい(「バカ試合」という変換ミスにも感心)に終始するみたいで戦争はすぐにはないだろう。

で、小説では韓国が北朝鮮の軍部の下部組織に浸透してプロパガンダを行い、軍部を実質的に弱体化させたうえで侵攻し、武力で半島統一を実現する。しかも「他国の軍隊はすべて出て行け」というおまけつきだ。

しかも撤退する中国軍から核兵器を没収して実質核保有国となる。

で、そういうのを中国が黙ってみているわけもなく、半島へ武力侵攻を企てる。それを米軍の秘密部隊が秘密の新兵器で阻止できるかな?というのがクライマックス。

で、書いているのが元米空軍少尉だたデイル・ブラウンという人なのだが、この人、絶対に軍のマニュアルとか作戦要綱とか持ち出しているのだと思う。だって、戦闘中のいろいろな手順や手続きが非常に細かく描写されていて、それがこの小説の魅力の一つになっている。

この作家の他の作品で読んだのだったと思うのだが、この人は爆撃機関連の業務についていたらしくて、戦闘機よりも爆撃機に偏重した戦術を立てる傾向にある。

ただ、ハードSF的な知識には弱いようで、秘密兵器プラズマ爆弾に関する考証がかなり弱いと思う。

でも、この人の本を固めて買ってしまっているので、もうちょっと付き合わないといけないんだなぁ。

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2018年2月12日 (月)

作家の回文で悩む

村上春樹の作品は面白いとは思うが、正直言って私は楽しめない。有名どころの作品はたいてい読んだが、最近の1Q84とか騎士団とかは読んでいない。

Kaibun で、こんな本を見つけた。タイトルの「またたび浴びたタマというのが回文になっているのだが、回文が44件あって、それぞれに村上春樹の小文が付いている。

でもまぁはっきり言ってこの猫の絵にやられちゃった感じ。

誰かが考えた回文に村上春樹の文を付けるなんて、誰がこんな企画を考えたんだろう? という興味もあってこの本を買ってみたわけだが、企画は本人自身だった。

あとがきで本人が書いているのだが、2000年の正月に「5日間は仕事をしない!」と決めたものの、さすがに手持ち無沙汰になって「あ」~「わ」までの44文字から始まる回文を考え始めた、ということだ。

回文の出来はあまりよくないが、小文のほうは本人もリラックスできているようで、楽に楽しく読める。

例えば「天狗の軍手」なんていうレベルの作品もある。「記号はしるし、しるしは動き」というのが私のお気に入りだが、作家自身のお気に入りは別のものらしい。

タイトルに使われたものはおそらくマーケティング担当者が決めたんだろう。

このブログを読まれている中には少なくとも二人のマック使いがいるはずなので、もうひとつ絵付きで紹介しておこう。

Kaibunri 「臨死のマック抱く、妻の心理」



村上春樹もきっとマック使いなんだろうな。

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2017年10月 9日 (月)

国際的ミステリで悩む

ジェフェリー・ディーバー漬けからアダム・ファウファーに鞍替えしたりした後、特に惹かれる作者もいなくて、読書としては迷走気味な今日この頃。

私の最近の読書傾向としては国際的なミステリというのか、中国がベトナムへ侵攻したりとか、それをアメリカの民間人が阻止するだとか、そんな小説からから始まっていたりする。

Tokyo_year_zero 次いで、東京YearZeroという、第二次大戦の終戦前後の東京を舞台にした警察小説なのだが、作者がなんと英国人のデビッド・ピースという人。外国人がよくこんな小説を書いたなぁというのが率直な感想。筒井康隆風のテキストがあったりして読みにくかったりもするのだが、8月15日の玉音放送の直後に「こうなったら長野県に立てこもって徹底抗戦だ!」とか言い出す人がいたりして、なんてことをどうやって思いついた?

Chonquo そのあと、「龍の帝国」という危ない本につかまりそうになったが、これは西暦2190年から始まる話で、古代中国的な政治体系が世界を支配しているというありがたくない状況で、世界は「アイス」と呼ばれる硬質プラスティックという大陸を超える床で仕切られた階層構造になっており、人々はまさに階層を成して暮らしている、という設定。で、作者が英国人のデビッド・ウィングローヴというひとで、この小説は日本語の文庫版では全16巻になるという超大河小説なのだ。

でも最初の1冊でお腹がいっぱいになったのでもう先は読まない。だって、未来小説なのに新しいものがほとんどないんだもの。

あとは、NYのユダヤ人社会の中で生きる孤児を描いた「8番目の子供」とか、スイスで起こった殺人事件をフラン人とかスイス警察とかが入り乱れながら解決していく「氷結」とか、イスラエル諜報部員が活躍する、今読み中の「亡者のゲーム」これはなかなかかっこよくておもしろい。まだ中盤なんだけど、読み終わるのが惜しい感じ。

Theheist ああ、そういえばこの「亡者のゲーム」の中でカズオ・イシグロの小説「日の名残り」(たぶんドイツ語版)が小道具に使われていたのだった。

こうやって、普段あんまり読まない国の小説を読んだりすると、ハリウッド映画化狙いのアメリカ製ミステリ小説とは違った面白さがある。お気に入り作家はなかなか見つからないが、国際的見地から乱読を続けていこうと思う。

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2017年6月 4日 (日)

古本の発掘に悩む

家のいくつかの部屋の壁紙を貼り換えようということになって、これが実はさぁたいへん。壁紙を貼りけ替えるということは、家具を他の部屋へ動かさなくてはならなくて、ということは本棚とかタンスとかTV台とかを空にしなくちゃいけない。

つまりちょっとした引っ越しくらいの作業が必要なわけだ。

で、その作業の中で本棚の奥の方からしばらく見ていなかったものが出てきたりする。最近見ていなくて捨てちゃったかなぁ?そんなはずはないのだが、とか思っていたものが見つかったりする。

Yamashita1
そんな発掘物のなかでも、これが出てきたのはうれしかったなぁ。山下洋輔の書くものを読み始めたのは筒井康隆の絡みからだったのだが、山下洋輔の書くものも面白くて、5冊くらい持っていたはずだが、後から読み返すとこの最初の本に比べるとそれほど面白くはなかったので捨てたりもした。

だから、ひょっとしてこの最初の本も捨ててしまったかな?と思ってしまっていたのだった。

まだ読み返していないけれども、確かこの本には山下洋輔が病気療養中に書いた「ブルースの解析」みたいなのが収録されていたはずだ。これをもう一度読んでみたいなぁ、と思ったりしたことがあったので、発掘されたことは実に喜ばしい。


Yamashita2ちなみにこの本の裏表紙というか、上の写真の反対側はこんなふうになっている。今にしてみれば特に目新しいものでもないが、当時としてはなかなか意表を突いたデザインだったと思う。

ああ、そういえばこのBlog タイトルの「お悩み手帳」というのもこの「風雲ジャズ帖」という名前に影響を受けているのかもしれない。

「帖」という字については「くらしのてちょう」が「暮らしの手帳」ではなくて「暮らしの手帖」である、なんていうのも伏線としてあったりもするかもしれないが、これはまた別の話。

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